俺様常務とシンデレラ

それに、どうやら話は常務の望む方向で落ち着いたらしいので、ここはひとまず黙っておくことにした。


うむ、偉いぞ、絵未。

それでこそ、この外面王子の秘書!



それから本当に会談はあっさりと終わってしまって、東堂会長はいそいそと立ち上がり部屋のドアへと向かう。

私と常務も立ち上がって会長の後ろに付いて行ったけど、葦原会長のところにあいさつをしに行くので、ここから先の見送りは必要ないと言った。


東堂会長は応接室のドアを開けて廊下に出ると、部屋の中に残った私と常務を振り返ってニンマリとした。



「ところで絵未ちゃん、もう猫丸に戻る気はないのかい? 絵未ちゃんがいてくれないと寂しいよ」

「え? そ、そうですか?」


大げさに眉を下げて困った顔をする東堂会長に、私はつい嬉しくなってしまった。


この会社に就職することになって、ドタバタと辞めてしまったアルバイト。

だけど、隠れ家みたいなお店の雰囲気や、無口な店長、真っ白くてふてぶてしい猫のマル。

それから、顔見知りになった常連のお客さんたちが懐かしくなった。


はやくちゃんとした会社で正社員として働きたいと思っていたけど、4年間アルバイトとして働き続けた猫丸のことは大好きだもん。



東堂会長の言葉につられて、つい猫丸のアルバイトに戻った自分を想像してしまった。
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