俺様常務とシンデレラ
「だ、だいたい、私をここへ連れて来てくれたのは夏目さんですよね。それに、常務が私を見つけたんじゃなくて、私が常務の背中に激突し……」
ぶーぶーと唇を尖らせる私の目の前に、一瞬、常務の端整なお顔がどアップで映り込んだ。
掴まれたままだった右腕を軽く引かれ、常務の黒い瞳の虹彩の境目までハッキリと見える。
私を覗き込む常務の形のいい唇が、私の唇からもれる言葉をそっと塞いで遮った。
「俺が、お前を見つけたんだよ」
ふにゃりと、優しく触れて離れる唇。
掴まれた右腕から、触れた唇から、常務の甘い毒が流し込まれ、私の身体を痺れさせる。
「俺はお前を気に入った。もう二度と、見失ったりしない」
き、気に入ったって……。
「あ、は、はは! じょ、ジョーダンですよね、ジョーダン。常務が私にキスするなんて、そんなことあるわけないです!」
「なんでだよ」
私が乾いた笑い声を上げてふいっと常務から目を逸らすと、すかさず不機嫌な声が降ってくる。
そうそう、これこれ。
常務は子どもっぽくて、ちょっと横暴なんだよ。
『クビがイヤなら馬車馬のように働け』とか言ったりね、うん。