俺様常務とシンデレラ
これだってアレだ、常務の意地悪だ。
「だ、だって、へっぽこ秘書だし」
「確かにお前はへっぽこなとこもあるが、俺のことをいちばん良く見てくれているのもお前だろ」
「で、でも、常務にはつり合わないし」
「なにがだよ。容姿の話なら心配いらないぞ、俺は十分可愛いと思ってる」
「あ、う、だけど、王子様が好きだし」
「だけどお前は、本当の俺をあっさり受け入れた」
ぐるぐると頭が混乱する。
ぱくぱくと口を動かすだけで、もう言葉が出てこない。
「あの、で、でも、えっと」
じょ、常務が私のこと可愛いって言った!
王子様モードでもないのに!
いや、まって、そもそも、その前に私にキスした!
昨日はガキみたいとか言ったくせに!
ぶるぶる震えて今にも卒倒しそうな私の隣で、常務が大きなため息をついた。
「もういい。お前の頭はちょっと鈍いようだから、先に身体に教えてやる」
そう宣言すると、掴んでいた右腕で私のふらふらな身体を操り、側にあった壁に思いの外優しく押し付ける。