俺様常務とシンデレラ
イタズラの成功を喜ぶみたいにニコニコと笑う常務。
そんな私たちのやり取りを見ていた彼女は、組んでいた細い腕を解き、腰に当てて、ツンと顎を上げてみせた。
「娘って言っても、私は後妻との間の子どもだから。お兄ちゃんとは一回り以上歳が離れてるの」
「うん、小鞠のお母さんはもともと葦原家の出身だから、俺と小鞠は遠い親戚なんだ」
そ、そうなんだ……。
そうか、だからアジュールに入ったブライダル会社が葦原の関連会社じゃなくて、東堂グループの子会社だったんだ。
私は頭の隅でそんなことを考えながら、呆気に取られつつ、その女の子の姿をぽかーんと見つめた。
東堂小鞠さん……。
えーっと、小鞠ちゃんは、漆黒の髪に同じ色の黒目がちな猫のような瞳をもち、雪のように白い肌の女の子。
長い髪を片方にまとめておろし、黒い上質なドレスの隙間から華奢な鎖骨が覗いている。
細くて長い、しなやかな手足。
儚げな見た目と強気な瞳が合間って、不思議な甘い魅力を作り出す。
突き放されているみたいなのに、どこか放っておけないと思わせる。
赤いハイヒールとお揃いの口紅が、彼女をさらに大人びて見せていて、なんだか妙にドキドキしてしまった。
とっても上品で育ちの良い、赤い首輪の黒猫みたい。
「大和、その人のこと、好きなの?」
私が小鞠ちゃんの美少女っぷりに圧倒されていると、彼女はその猫のような瞳で常務をまっすぐに見つめ、ものすごい率直さでそう言った。