俺様常務とシンデレラ

ふーんだ!

世の女性に見せてあげたい。

本当の常務は子供っぽいし、王子様じゃないし、全然甘くない!


きっと自分が甘党だから、全ての甘い要素を自分で吸収してるんだ。



常務の黒い瞳に映る怒った私の顔も、大概子どもっぽいけれど、それは置いておこう。


「だけど、俺が誰をいちばん可愛いと思って、誰を他の男にはやりたくないと思うかは、俺の勝手だし俺の主観だ」


不敵に笑い、尊大に宣言する。

不機嫌に睨みあげる私の視線を軽く受け流し、常務はそっと顔を近付ける。


それから突き出した私の唇に、同じ形にした自分のそれを優しく触れさせた。



「俺が誰にキスしたいと思ってるか、わかるだろ?」



鼻先が触れ合う程の距離で囁かれて、私の顔はゆでダコのようにボンッと赤くなる。

尖らせた唇が本当にタコみたいだ。

常務の手に挟まれた頬は、特別熱く燃え上がっているように感じる。



くっ、くうぅーーー!

なんか言え、私!

これじゃあまるで、私が常務にメロメロみたいじゃん!


「しっ、しし、しっ、知りません! そんなの!」

「ほほーう。この前十分に教えたつもりだったがな。もう手加減は必要ないってことか?」


私はその言葉にギョッとする。

あれで手加減してたの?

私なんて、強烈すぎて腰抜かしちゃったのに……!
< 76 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop