LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
*
長い廊下を半ば早歩きで歩く。
“黒川宗佑”と書かれた部屋の前で立ち止まった。
ドアに手をかけて、思い切りスライドさせた。
「おい、宗佑」
「うわっ!?……なんだよ。神崎かよ」
「呼び捨てすんな。
せめて“さん”付けで呼べ。ばーか」
カーテンを開けて声をかけるなり、
驚いた顔をする宗佑。
やっぱりいちいちむかつくな。
こいつ……。
俺は宗佑の額を軽く小突いた。
宗佑は俺をきつく睨みつけていた。
「あのさ、
なんでお前を敬わなくちゃいけないんだよ!?
それに、お前こそ俺のこと呼び捨てにすんな!!」
「なんでだよ」
「俺は患者だぞ!?てめぇこそちゃんとしろや!!」
「じゃー。宗佑くん?」
「なっ!!ガキ扱いすんな!!」
「はいはい。分ったから黙れよ。うっせぇな」
はぁ。
疲れる。
なんでこんなにガキなんかな?
高校生ってこんなんだっけ?
こいつ、俺をものすごい顔で睨みつけるんだ。
「おい、なんであの人は来ないんだよ」
「あの人って??」
「桐生って人」
「ああ。俺だけじゃ不満か?」
「別に。逆ならよかったのにって
そう思っただけだよ。ばーか」
宗佑は俺を睨みながらそう言った。
わざとだな。こいつ。
本当はどっちだって関係ねぇくせに。
きっとここに桐生さんが来たら同じこと言うんだろ?
「はぁ……。診察するからじっとしてろよ」
聴診器を半ば強制的に当てると、
宗佑は緊張したような面持ちで、ずっと目を閉じていた。