LAST SMILE ~声を聞かせてよ~







長い廊下を半ば早歩きで歩く。


“黒川宗佑”と書かれた部屋の前で立ち止まった。


ドアに手をかけて、思い切りスライドさせた。


「おい、宗佑」


「うわっ!?……なんだよ。神崎かよ」


「呼び捨てすんな。
 せめて“さん”付けで呼べ。ばーか」


カーテンを開けて声をかけるなり、
驚いた顔をする宗佑。


やっぱりいちいちむかつくな。
こいつ……。


俺は宗佑の額を軽く小突いた。


宗佑は俺をきつく睨みつけていた。


「あのさ、
 なんでお前を敬わなくちゃいけないんだよ!?
 それに、お前こそ俺のこと呼び捨てにすんな!!」


「なんでだよ」


「俺は患者だぞ!?てめぇこそちゃんとしろや!!」


「じゃー。宗佑くん?」


「なっ!!ガキ扱いすんな!!」


「はいはい。分ったから黙れよ。うっせぇな」




はぁ。
疲れる。


なんでこんなにガキなんかな?


高校生ってこんなんだっけ?


こいつ、俺をものすごい顔で睨みつけるんだ。


「おい、なんであの人は来ないんだよ」


「あの人って??」


「桐生って人」


「ああ。俺だけじゃ不満か?」


「別に。逆ならよかったのにって
 そう思っただけだよ。ばーか」


宗佑は俺を睨みながらそう言った。


わざとだな。こいつ。


本当はどっちだって関係ねぇくせに。


きっとここに桐生さんが来たら同じこと言うんだろ?



「はぁ……。診察するからじっとしてろよ」


聴診器を半ば強制的に当てると、
宗佑は緊張したような面持ちで、ずっと目を閉じていた。




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