精霊の謳姫

早朝の朝陽が上り始め、晴れ渡った空は青と橙のグラデーションで彩られている。
石造りの渡り廊下に陽光が差し込み、
支柱の影が作る横縞柄も長い。


兵を招集すべく鍛錬場に向かっていたリドルだったが、途中角を折れたサリヴァンが前方からやって来るのを見つけた。


互いが互いの存在に気づき、視線が交差する。


ふっ、と小馬鹿にするかのように口元を歪めるリドルを見て、サリヴァンはあからさまに顔をしかめた。



「なに?」

「いえ?
まさか貴女があんなミスをするなんてね。
珍しいと思っただけですよ。」


”ミス”を強調する辺り本当にタチの悪い男だ、とサリヴァンは尚更柳眉を寄せる。

不快感を振り払うかのように目を逸らし、そのまま彼の横を通り過ぎようとするサリヴァンだったが、突如阻んで来た腕にそれも叶わなかった。

抗議の視線を向けようとした刹那、
突如景色が陰り、背中に軽い衝撃が伝わる。

陽光は柱に遮られ、その影が二人を隠した。
視線の先には思わずゾクリと総毛立つような熱を瞳に宿したリドルが、微か笑んで静かに彼女を見下ろしている。

壁の温度が背に冷たい。

強引でありながら緩いその拘束に、
サリヴァンは挑発的な仕草で首を傾ける。



「…嫌味なの?
ノヴァを躾たのは貴方だわ。」



彼に主導権を握られては、手の上で良い様に踊らされるのがオチだとサリーは経験上、嫌という程知っている。



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