精霊の謳姫
弱みなど見せまいと、悠然に微笑んで見せた。
その艶やかな赤の花弁が弧を描けば、
一体どれほどの者が恍惚とさせられるだろう。
紅緋の瞳が濡れたように艶冶で、
そこには鋭利な美しい顔の男が完璧に繕われた笑みを湛える姿が映されていた。
「えぇ、確かにそうですね。
ですがその後の監督を務めていたのは
サリヴァン、君ですよ。
貴女の監督不行き届きです。」
赤の髪をするりと撫でながら、
リドルは彼女の黒いローブを少しずらし、ゆっくりとその顔を陶器のように白い首筋へ沈めていった。
生々しく、官能的な刺激が奔り、
サリヴァンが僅かに肩を震わせた
その直後___。
「…ッ、!?」
首筋からナイフでも突き立てたかのような痛みが全身を駆け、次いで傷口を抉るような感覚に、思わず息をのんだ。
咄嗟に突き飛ばそうとするも、固く柱に固定された両腕はビクともしない。
声を発することを思い出した頃には、
まるで口付けでも終えたかのようにリドルが優雅に身を引き、サリヴァンは即座に痛みの残る肩口を押さえていた。
ジワジワと後を引くそこに触れれば、ほんの僅かに魔力の気配を感じた。