エターナル・フロンティア~前編~
「ところで、あの事件ってどうなったの?」
「あの事件?」
「ほら、港での騒ぎよ」
「あれね。相手が折れてくれたそうよ。とても紳士的な人だったら良かったものの、あの人が悪い人だったら命を奪われていたわ。まあ、どのように入学したのかわからない人だし、どうでもいいけど」
その瞬間、イリア以外の全員が声を上げて笑う。嫌いな相手には、とことん嫌いな態度を取る。まさにその見本のような態度を取るクラスメイトに、イリアは共に笑うことはできなかった。
確かにやっている行為は常識を逸脱していることも多かったが、正直ここまで言っていいものかと思ってしまう。人間の裏と表の部分は、人それぞれ異なる。助けてくれたことに対しては、素直に感謝することができた。だからといって、笑うという行為には賛同はできない。
「そんなことより、卒論を書きに行く途中でしょ?」
「良かったら、一緒に書かない? 私達全員、そのつもりだったのよ。大勢の方が、捗るわよ」
「ねえ、行きましょ」
「イリアだったら、歓迎よ」
この時期、卒業を控えた生徒達は卒論を仕上げることに集中する。その為、イリアの行動を正確に当てたのは何ら不思議などない。寧ろ、そうしなければ卒業を危うくしてしまう。
「うん。宜しく」
「それなら、決まりね。この中で、誰が一番に書き終えるのかしら。そして、合格も貰わないと」
「競争ね」
「負けないわよ」
「それじゃあ、気合を入れて――」
その言葉に合わせて、掛け声を共に一斉に拳が天に向かって上げられる。そして、仲良く並んで図書室に向かった。
図書室に向かう途中、何やら騒がしい現場に遭遇する。クラスメイト達は「またあの二人」と小声で囁きあうも、どうも様子が違う。集まっている者の多くは女子生徒で、それも歓声を上げていた。不可思議な光景に小首を傾げつつ、人垣の間に割り込み何が起こっているのか確かめる。すると其処には、見覚えのある人物――いや、憧れの相手が立っていた。