エターナル・フロンティア~前編~
「……何を」
「いつもの発作のようだね」
耳元で囁いてくる言葉に、ソラは何も答えることはしない。ユアンは無言の反応から回答を導き出すと更に言葉を続けていくが、やはり何も言わない。今回はユアンに従うしかないと諦めたのか、その態度は妙に大人しい。限界が近い――そのことは、ソラもわかっていた。
「薬は用意してある」
「……用意はいいですね」
「僕は、君の世話をしないといけない」
誠実の押し付けと取れる言葉でもあったが、これはユアンなりの心遣い。そのように思えば腹立たしいという感情は湧いてこないが、意識を改善させるほどソラはユアンを好いてはいない。それに、ユアンの行動は謎が多い。これで信頼しろというのが、無理が強かった。
「拒むことはできない。そのことは、わかっているだろう。身体は、正直だ。このように……」
ソラが能力者ということを知っているのは、アカデミーの生徒の中でイリアだけ。よって此処で力を使ってしまったら、大勢に能力者だということを知られてしまう。それは、あまりにも危険だった。彼女達は若さ故に感情をストレートに表し、特に先程の女性がいい例である。
感情的に物事を言い、自分のことしか考えていない。だからこそ、ソラの正体を知られるわけにはいかなかった。ユアンの言葉に、ソラは無言で頷く。力が無い者が能力者に対し、非情な仕打ちを仕出かすことは嫌でも理解している。悔しいが、ユアンの言うことが正しい。
ユアンはソラを背負うと、会話を続けている二人のもとに向かう。それを見たカディオは目を丸くしソラに大丈夫かどうか尋ねるが、イリアは立ち尽くしたまま動こうとはしない。
「何処か、横になれる場所はないかな?」
「こ、此方に……」
ことの重要性に気付いていたのか、イリアは慌ててその場所に案内する。その後をゆっくりとした足取りでついて行くカディオは、どこか不満そうな表情を見せていた。それはイリアとの会話を邪魔されたということではなく、イリアの態度に不思議な印象を持ったからだ。
本来なら、イリアはカディオが見せた態度を取らないといけない。しかし彼女は立ち尽くし、何も行動を起こさない。衝撃の大きさに動けなかったのか、カディオは暫くイリアに視線を向けている。すると、身体が小刻みに震えているのに気付く。そして、顔が真っ青だった。