エターナル・フロンティア~前編~
(まさか……)
ふと、ひとつの考えが脳裏を過ぎる。その考えが正しいというのなら、ソラは何も話していないことになるだろう。幼馴染に過度の負担を掛けたくないのか、それとも別の意味が存在しているのか――ソラの心情を何となく理解したカディオは、肩を竦めるしかできなかった。
実にソラらしい考え方だが、それを指摘している場合ではない。ユアンがソラを休憩用に置かれたベンチに座らせると、ポケットから何かを取り出す。それは、掌サイズの小さい箱。蓋を開けると其処には注射器とアンプルが入っており、それらを取り出すと注射器に液体を入れていく。
「それは?」
「君は知らないでいい」
イリアの言葉を受け流すと、ソラの袖を捲り上げ薬を投与する。その瞬間、痛みに呻き声が発せられた。だがそれは一時的な痛みで、その後は特に反応はなかった。すると徐々に薬が効いてきたのか、ソラの顔色が良くなっていく。それに、呼吸も徐々に落ち着いてきた。
「これからは、気をつけるように」
しかしソラは、無言を通す。そのことにイリアは礼を言った方がいいと注意するが、相手が相手なので礼は言い難い。それに勝手に薬を投与されたことに、腹立たしい気持ちも強い。
「有難う……ございます」
「いや、感謝はいい」
強制的に言わされた感謝の言葉に、ソラはどこか不機嫌であった。確かに礼を言うのは当たり前だが、このように言われると逆に反発心が生まれる。相手が幼馴染なら尚更のこと。
「ソラ、大丈夫か?」
心配そうに、カディオがそう尋ねてくる。ソラは彼の言葉に無言で頷くも、不機嫌たっぷりの表情を浮かべている。それを見たカディオは小声で囁くと、イリアに付いて尋ねていた。
「何も知らないのか?」
「何が?」
「彼女だ。やけに、動揺する」
「別に、関係ないよ」
吐き捨てるように言うと、ソラはベンチに横になってしまう。だがそのように言われても、カディオはソラとイリアの関係を詳しく知らない。だからこそ、今の状況を素直に受け入れることができないでいた。それと同時に、改めて両者が微妙な関係に置かれていると知る。