エターナル・フロンティア~前編~
だが、それを表す明確な答えは見付からない。互いが変わった――多分、それが関係しているだろう。イリアはアカデミーを卒業したら、科学者の道を進む。そうなれば、ますます溝が生まれてしまう。
能力者と科学者――それは、相容れぬ存在。いや、タツキは別といっていい。それに、分野が違う。しかし“科学者”ということには代わりない。能力の研究をしたがっていたという過去を考えれば、避けて通れない何かが存在する。そしていつか、別れの時が来るに違いない。
「まあ、気のせいならいいが」
「なら、言うな」
「悪い。で、具合はどうだ?」
「さっきよりはいいよ」
投与された薬には即効性の効果があったのだろう、いつの間にか息苦しさは消えていた。そのことに安堵感を覚えたカディオは、ユアンに礼を言う。すると何人もの人間から礼を言われたことに恥ずかしくなったのだろう、これ以上の例はいいと苦笑いを浮かべながら断る。
「僕は、これで失礼する」
「帰られるのですか?」
「仕事があるからね」
「態々、有難うございます」
「彼に対してのボランティアだ」
そう言いつつ、視線を横たわるソラに向ける。恋の手助け……そのような意味で、ユアンは案内を買って出た。そのことに気付いたカディオはポンっと手を叩くと、不適な笑みを浮かべる。
「そうなんですよ。ソラは、恋愛をしようとしないのですよ。本当に、欲望には忠実にならないと」
「欲望……まあ、協力しよう」
「助かります」
「では、僕は――」
言葉と同時に、ユアンは満面の笑みを浮かべる。そして、片手を上げつつ立ち去っていった。刹那、周囲から黄色い悲鳴が飛ぶ。どうやら噂を聞き付け、更に生徒が集まってきたようだ。仕事があると言いながらも、丁寧に対応していくユアン。その優しさが、彼の人気を高めていく。
男のとってこの光景は、実に羨ましい。しかしこれはユアンだからこそ似合うのであって、カディオは行ったら笑いの対象になってしまう。ふと物欲しそうな顔をしているカディオに、ソラの鋭い一言が突き刺さった。その瞬間、彼の心は鋭い刃物によって深く抉られていく。