エターナル・フロンティア~前編~

「お、おい!」

「うーん、軽いな。本当は、女じゃないのか? 性別を偽っているのなら、教えてほしいな」

「いい加減にしろ」

「いいじゃないか。具合が悪いんだろ?」

「普通に歩ける」

「遠慮するな」

「遠慮する!」

 心配する素振りを見せるも、表情は面白い玩具を見つけた子供のように笑っていた。つまり、面白がってやっている。そうとわかれば、ソラは容赦をしない。徐に拳を作ると、カディオの横腹を殴る。その瞬間、カディオの時間が止まった。そして、口を開いたまま硬直する。

「ふう、お前という奴は……」

 素早くカディオから逃げると、ソラは服についた埃を叩いていく。一方殴られたカディオは、額に大量の脂汗が滲み出ていた。それに足は小刻みに震え、どうやら相当堪えたようだ。

「さあ、帰るぞ」

「……態とやっただろう」

「さあ、どうだろうね」

「そ、その目は……マジだ」

 口ではそのように言うも、口許は緩んでいた。ソラは「手加減」という言葉を使うことは少ない。特に相手がカディオの場合それが著しく、時としてこのように手が飛ぶこともある。だが大半の原因はカディオに問題があり、そのことに気を付けていれば手が飛んでくる回数は減る。

「置いていくからな」

「お、おい!」

 手を伸ばし懸命にソラを呼び止めようとするも、横腹が痛み出しそのまま固まってしまう。日頃から身体を鍛えているカディオであったが、どうやら拳が入った場所が悪かったようだ。呼吸を整える為に何度も大きく深呼吸をすると、意を決し勢いよく一歩を踏み出す。

「ど、どうだ」

「おお! 凄い凄い」

 カディオの頑張りに、ソラは素直に拍手を送る。しかし、二歩目が続かない。どうやら一歩目で、根性を使い果たしてしまったようだ。そんなカディオの姿に、ソラは肩を竦めてみせる。そして先程のお返しとばかりに、冷ややかな視線と刺のある言葉を浴びせていく。
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