エターナル・フロンティア~前編~

「そういうことなら、仕方ない」

 つまらないという雰囲気を見せるカディオであったが、病人相手に無理を言う性格ではない。カディオは、ソラの発作の辛さを知っている。それは、何度か発作を起こした現場に立ち会っていたからだ。あの苦しみは、常人では計り知れない。ソラは、常にその恐怖に苛まれている。

「なら、元気になったら」

「いや、本当に勘弁してほしいな」

「わかったよ」

 カディオは、それ以上何も言わなかった。ソラの恋愛に関しては、想像以上に厳しいと判断を下したからだ。結論付けられた内容に、カディオは真剣に悩んでしまう。しかしソラの何気ない言葉によって、別の考えへ移ってしまった。そう、今は他人より自分の恋愛が大切だ。

「まずは、お前からだな」

「お、おう!」

 裏が感じられるソラの怪しい表情に、カディオは一度身体を震わすと立場が逆転してしまったことに気付く。これ以上の反論は、無謀そのもので身に危険が迫る。そう瞬時に悟ると、素直に帰宅の途につくことを選択する。そして、ソラと二人で駐車場へ向かうのだった。


◇◆◇◆◇◆


 ソラとカディオが恋愛について語っていた頃、イリアはクラスメイトからの質問攻めは今も続いていた。皆、二人について興味津々。何より相手が異性となれば、妄想は果てしなく膨らんでいく。時に願望が交じり合い、話の内容は徐々におかしな方向へ変化していく。

「どういう関係なの?」

「まさか、彼氏?」

「でも、二人いたわよ」

「なら、どちらかでしょ?」

「どちらかわからないけど、羨ましいわ」

「本当よね。だって、アカデミーまで来てくれているのよ。絶対に、普通の関係じゃないわ」

 クラスメイトの妄想力は実に逞しいもので、勝手に物語を生み出してしまっている。それを無言で聞いているイリアは、完全に真実を話すタイミングを見失っている。ただ目の前で交わされる会話に、立ち尽くすしかない。そして、勝手とも取れる内容を静かに聞いていた。
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