エターナル・フロンティア~前編~

「で、どっちが好み?」

「やっぱり、銀髪の人でしょ」

 クラスメイトに選ばれた人物に、イリアは動揺を隠し切れない。それは好みの問題であって、付き合うという意味ではない。しかし、選ばれたことに嫉妬心が湧く。何故、ソラを選ぶと――

 それが、悔しかった。

(そうだよね、ソラってかっこいいもの)

 二人は、常に側にいる関係であった。そしてイリアは、ソラとどのような距離感にあるのか考えたことがなかった。無論、異性としては見ていたが、それ以上でもなければそれ以下でもない。互いに、幼馴染同士――そのように認識していたが、ふと迷いも生じてくる。

 クラスメイトの話を聞いていると、チクっと心が痛む。それが「取られたくない」という感情が湧き出ているとイリアはわかっていたが、言葉としては表すことはない。そう、彼は――。

「どっちが彼氏なの?」

「彼氏じゃなくて、幼馴染なの」

 その言葉にクラスメイトの一人が納得した表情を浮かべると、イリアに幼馴染がいるという噂を聞いたことがあると説明しだす。語られる内容に、イリアは苦笑いを浮かべるしかできない。やはりこの話は、アカデミー中に広がっていた。そして、クラスメイトから何を言われるか決まっていた。

「その話、本当だったんだ」

「ねえ、幼馴染はどっちの彼?」

「……銀髪の人」

 イリアの幼馴染がわかった途端、クラスメイト全員の表情が変わる。面白いものを発見した時の目線を向け、口許が笑っていた。どうやら、恰好のネタを提供してしまったらしい。

「いいわね。かっこいい幼馴染で」

「私は、幼馴染なんていないわ」

「そう、友達はいるけどね」

「幼馴染って、憧れるわ」

「イリアって、本当に恵まれているわよ」

「昔から、あんなかっこいい人と付き合っているのだから」

 次々と発せられていく言葉の中の端々に、何処か刺が大量に含まれていた。理想の相手が幼馴染――それだけで相手に「羨ましい」という感情を抱かれてしまい、嫉妬に近い何かが周囲に漂う。女は女に厳しいというが、イリアはそれを現実に体験している状態だった。
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