エターナル・フロンティア~前編~
「いや、ソラの言う通りかもしれない。過去の女を引きずるなんて、女々しい男のやることだよな」
台詞の一部に、適切でない言葉が含まれていた。そのことに気付いたソラは項垂れ、大きな溜息をつく。「過去の女」その単語にいつ付き合ったのかと心の中で突っ込みをいれると、徐に立ち上がる。
「何?」
「私用だよ。だから、話を進めていいぞ」
ソラの行動が気になるのか、会話を続けようとはしない。視線でソラの動きを追い、時折「ほへ」と、言葉を漏らす。何ら意味の含まれていない言葉の数々に、ソラは渋い表情を作るも特に反論はしなかった。
これもいつものこと。そう自分に言い聞かせたソラは、パソコンの電源を入れると椅子に腰掛ける。これから行うことは、メールチェック。中にはプライベートな内容も含まれていたりするが、カディオに見られて困るものではなかった。それに、変に隠すと逆に怪しまれてしまう。
「何か、面白いメールはあるか」
「別に、何もないよ」
予想通り、カディオは食い付いてくる。すると勝手にマウスを奪い取り、メールを読みはじめる。失礼にも程があるが、彼にプライベートをどうこう語るのは無意味に近いのでソラは反論せず、好きなようにさせた。
カディオから玩具を取り上げたら、何かと煩い。そのようなところだけを見れば子供っぽいと思ってしまうが、カディオにも良いところは存在する。だからこそ、ソラは多少の我儘は受け入れてきた。
「おっ! イリアちゃんのメール発見。やっぱり、メール交換をしていたんだな。仲がいい証拠だ」
「何だよ、その“やっぱり”って」
「いや、アカデミーの件」
一瞬、ソラの表情が曇る。カディオは思わず口をつむぎ、しまったという表情を見せる。地雷を踏んでしまった――そう感じ取ったカディオは素直に謝るも、ソラからの返事は一切なし。
「気にしている?」
「何を?」
「いや、だから……」
それ以上の言葉を、続けることはしなかった。地雷を踏んだ時点でソラは機嫌を悪くしており、カディオと視線を決して合わそうとしない。ソラはカディオに「怒る」という感情表現を示すことは、意外に多い。だが、心の底から本気で怒るということは、滅多にない。