エターナル・フロンティア~前編~

 これなら、納得がいく卒論に仕上がることであろう。これでアカデミーを卒業し、憧れの科学者(カイトス)としての生活……とは、素直に喜ぶことはできない。科学者の道は、思っている以上に厳しい。それに、目標としている人物は遥か彼方に存在する。まさに、雲の上の人といっていい。

 アカデミーの生徒の中で、イリアは彼の一番近くにいることができた。それは、アシスタントの件が示している。名指しで指名してくれるということは、それだけ信頼されている証拠だ。

(何故――)

 だが、よくよく考えるとおかしな部分が出てくる。何故、態々アカデミーの生徒を選んだのか。研究所には、イリアより優秀な科学者が沢山いる。普通なら、その中から選べばいい。

 それなのに、どうして自分を――其処に何かがあるのではないかと考えるのは、一種の乙女心。しかしイリアの場合、考えれば考えるほどおかしな方向に行ってしまい、思考を混乱させる。

(そうなのかしら)

 イリアが楽しい想像をしている時、カバンに入れてあった携帯電話が震え出した。一体誰だろうと思いつつ、名前を確認する。その相手は、例の二人。“あのことを聞いた?”という催促メールであった。諦めていたと思っていた内容に、イリア渋い表情を作ってしまう。

 クラスメイト達の噂では、新しい彼氏を作ったという。それも、合コン会場で。それだというのに、また合コンを開きたいというのだから――正直、呆れてしまう。一体、何人の彼氏を作りたいというのか。それぞれ利用すべき人数を用意する気でいるのかわからないが、いつか痛い目に遭うだろう。異性も馬鹿ではなく、友人達の考えなどすぐに見抜くだろう。

 そして事件が発生した場合、イリアのもとへ流れてくる。可能性がないわけでもないが、あの者達の行動を見る限り有り得た。飛び火は避けたいところであったが、これは無理なことだ。

 手っ取り早く卒業し就職してしまう。同じ職場というのは現実的に有り得ないので、上手く避けて生活を送れば楽に生きていくことができるだろう。その前に、彼女達は卒業できるか危ない。現に、出席日数と単位が足りていない。そう考えると、卒論は無用の長物だ。

(ソラのことは断っても、大丈夫よね)

 卒論が忙しくて、聞く暇がない。尚且つ、相手は仕事が忙しい。言い訳に近い嘘であるが、断る理由はそれしか思いつかない。二人ながら簡単に見破ってしまう嘘であるが、卒業が掛かった生徒に頼みごとをする方が間違っている。それだけ卒業について、甘く見ている。
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