エターナル・フロンティア~前編~
足早にその場か離れると、オープンカフェに向かうことにする。その時、イリアの横に一台の車が停車した。同時にその車の窓が開かれ、彼女の名前を呼ばれる。それは意外すぎる人物の登場であり、イリアの身体が石のように固まってしまう。まさに、運命の出会いに近い。
「お、おはようございます」
そのように声を掛けてきたのは、何とユアンであった。予想外の人物の登場にイリアは混乱し、パニックに陥ってしまう。生憎、今日はお気に入りの服を着ていない。このように出会うとわかっていたら、イリアはお気に入りの洋服を着ていた。ユアンは尊敬と憧れが入り混じる存在だからこそ、必要以上に意識してしまい会話をしているだけで落ち着かない。
「このような場所で出会えるとは、偶然だね」
「は、はい。お会いできて、嬉しいです」
イリアは、思っていた感情を素直に言葉として表していた。彼女は、本当に嬉しいと思っていた。周囲に誰も歩いていなければ、この場ではしゃいでいたに違いない。ユアンと二人っきりで話すということは、ファンクラブの会員が夢見ることで、目撃されたら総攻撃を受けてしまう。
「今日は、休みかな?」
「いえ、アカデミーは午後から行く予定です。ですから、先程まで図書館で卒論を書いていました。ラドック博士の仕事もありますので、急いで仕上げていまして……ですので、あの件は頑張ります。後は、教授から合格を貰わないといけませんが、多分平気だと思いますので」
「そう、仕上がって良かったよ。もし頼んだことによって遅れてしまったら、僕の責任だから」
ユアンの優しい言葉に、イリアの頬が徐々に緩んでいく。ユアン・ラドックという人物は、多くの人物の憧れを抱き尊敬の念を抱く。そのような人物からの温かい言葉は、先程までの嫌な気分を吹き飛ばすだけの効果があり、話せば話すほど恥ずかしさが込み上げてくる。
「そんなことは、ないです」
「そのように言ってもらえると、助かるよ。今まで、無理な頼みをしたのかと思っていたから」
「いえ、ラドックは博士の頼みごとなら……が、頑張らないといけません。脚を引っ張らないように致します」
イリアに向けられた、満面の笑み。その純粋無垢ともいえる笑顔に、イリアは心臓を激しく鼓動させ、半分意識が飛びそうになってしまう。それは、イリアだけではない。ユアンを尊敬する女性ならこれだけで多くが簡単に落ちてしまうだろう、それだけ破壊力があった。