エターナル・フロンティア~前編~
「そうだった。喧嘩をしたと言っていたね」
「ソラを、研究対象にはできません」
「大丈夫さ。相手は、幼馴染だ。困っていることがあるのなら、素直に協力してくれるだろう」
「喧嘩の内容は、そのことです。私は能力研究の道に進みたいと言ったら、自分を研究対象にできるか。そう、言われました」
「進みたいという気持ちは、あるみたいだね」
「前から、思っていました。それに、能力研究は科学者の憧れです。難しいとわかっていますが、ソラのことを少しはわかりたいと思っています。ですが、今の私では無理でして……」
「それなら、進むべきだよ。少しでも学んでおけば、相手のことを深く理解できる。力を持つものは、苦労が多い」
ユアンの意見は、正しいものであった。しかし独学で学んだ知識だけでは、相手の心を知ることはできない。いや、表面部分のみだけ知ることができるだろう。イリアは、能力者という存在と力については無知に等しい。知っているのは、見聞きしたことのみしかない。
決してそれが、正しいとは限らない。ユアンの誘いを受け、本格的に学ぶことになったら――ソラの気持ちを理解することができ、支えることができるというのか。だが、戸惑いがないわけでもない。イリアは、遣る瀬無い気持ちの方が強かった。それはこの世界の内情と、父親が大きく関係している。
「彼等のような存在は、とても暮らしにくい世界だ。よって誰かが、側にいないといけない。彼の場合は、ランフォード君が必要だ。幼馴染という立場は、偶然ではなかった。違うかな?」
「たまたま、家が隣同士だっただけです。私とソラはそれだけの関係でして、それ以上は……」
「運命だって、時として必然だよ」
「少し、考えさせてください。今は、アカデミーの卒業のことを考えませんと。留年は、したくないです」
「返事は、急がなくていい」
「……はい」
「ただ、期待はしている」
「わかり……ました」
ユアンの台詞が心を掻き乱す。ソラへの気持ちは強く、それに学びたい分野に行きたいという気持も存在した。視線の先にある、憧れの人の笑顔。能力研究を行う科学者として生き、幼馴染を実験対象として見る。複雑な心境であったが、イリアの心はある方向に傾いていた。