エターナル・フロンティア~前編~

(うん。聞いてみよう)

 意を決しイリアは電話を掛けるが、呼び出し音が鳴るだけで相手が出ることはない。忙しい為に、電話に出る暇がないのか……イリアは溜息をつくと、電話を切る。そして暫く携帯電話の画面を見つめていると、あることを思い出す。それは、例の二人の頼みごとであった。

(忘れている……よね)

 何も言わないということは忘れている可能性が高いが、思い出した瞬間、何を言われるかわかってものではない。卒業式まで油断できず、何より二人の我儘に付き合いたくなかった気持ちがあった。

 だが、ささやかな幸運がイリアのもとに舞い降りる。それは、二人の問題行動が会議の議題となってしまったのだ。それにより不用意な動きができなくなり、ソラの件を忘れてしまった。

 アカデミーで議題にならなければ、彼女達にソラを会わせることになっていただろう。そして、ソラとの関係が確実に悪くなっていた。あの二人が能力者について、どのように見て思っているのかわからないが、いい印象……というより、不快感を持っていることは確かだ。

 必要以上に、他人に厳しく当たるあの性格。そのことを考えれば、自ずと考えを導き出すことはできた。しかし自身に対しては砂糖のように甘いので、結果的に予想外の方向へ進んでくれた。

 卒業が危うい二人に、ソラを会わせずに済んだ。それはイリアにとって喜ばしい出来事であったが、何故か素直に感情を表現することができない。そう、心の中に何かが引っ掛かる。

 それは時折、チクっと疼く。

(……そうよ)

 記憶を探り、今までの出来事を思い出していく。

 そう、アカデミーの件だ。

 イリアはソラが能力者ということを知っているが、例の発作についても知らなかった。勿論、それはソラが話していないのが原因なのだが、それでも思い出すと彼の身体が気に掛かる。

 元気になったのか。

 それとも、入院したのか。

 また、別の何かがあったのか――

 つい最近の出来事ではないというのに、思い出した瞬間、無性にソラの状況が気になってくる。他者と違う力を持ち、それにより迫害を受けている。また、死に直結するほどではないが、発作によって苦しめられる。だからといって、ソラが喜ぶ手助けができないのも現実。
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