エターナル・フロンティア~前編~
勿論、回答が無いので判断はし難いが、置かれている立場を考えればいい回答は望めない。
イリアは思わず、枕に顔を埋める。
そして、愁えに浸った。
◇◆◇◆◇◆
薄暗い明かりが照らす店内で、タツキは誰かと待ち合わせをしていた。コーヒーが注がれたカップを片手に携帯電話を弄る姿から、どうやら待ち人が約束通りの時間に来ないようだ。
素早い指の動きでメールを打ち送信すると、コーヒーを飲み気分を落ち着かせる。すると見計らったように約束の相手がタツキの前に姿を現すが、全力疾走をしてきたのか肩を呼吸している。
「遅い! 十分遅刻」
「悪い。抜け出すのに、時間が掛かった」
二十代後半のこの男はタツキの元同僚で、名前はクリス・ハートラ。タツキと同時期に同じ部署に配属されたという関係から、彼女が研究所を辞めてからも時々このように会っている。
クリスは能力研究の裏事情を知っている数少ない人物で、タツキと同じ考えを持っている。だからこそ、タツキにとっては話しやすい。何より、本音で向き合えるのが有難かった。互いに愚痴を言い合える仲で、それも真顔で殺傷能力の高い毒を吐くのだから凄まじい。
「そうね。あそこの忙しさは、本当に異常だったわ。毎日のように徹夜で……懐かしいわね」
「そうだな……ほら、欲しがっていた資料だ」
その言葉に続き、テーブルの上に一枚のディスクが置かれる。それを受け取ったタツキは素早くカバンの中に仕舞い込むと、すました表情を浮かべる。しかし周囲に怪しい人物がいないかと、視線を走らせていた。
「有難う。助かるわ」
「まあ、いいさ。悪用しないと、信用している」
「で、最近はどんな感じ?」
「良いも悪いも最悪だ。アイスティーひとつ」
オーダーを聞きに来たウエイトレスに注文を告げると、クリスは腕を組み椅子に凭れ掛かる。タツキが言葉で示していたように連日の徹夜が響いているのだろう、クリスは疲れたような表情を浮かべていた。普段からだらしない格好をしているが、今は更にだらしない。