エターナル・フロンティア~前編~
手入れしていない髭は伸び放題で、無造作に伸ばしている赤茶色の髪は鳥の巣状態といっていい。これでタツキと年齢が近いのだから、外見的に相当老けているといっていい。いや、身嗜みをきちんと整えればそれなりに見えるのだが、決してそれを行おうとはしない。
しかしこれについてタツキは、その点をこれ以上指摘することはしない。過去に何度も指摘してきたのだが、クリスは全く聞いてはくれなかった。最近は見て見ぬ振りをしているが、時折不潔とも取れる外見に辟易してしまう。それだけ、見た目は褒められたものではない。
「頭を掻かない」
「別にいいだろう」
「フケが落ちたら、どうするの」
その単語に、周囲で食事をしている客が一斉に視線を向けてくる。それは客だけではなく、ウエイトレスも同じように視線をクリスに合わす。身体に突き刺さるような痛い視線にクリスはゆっくりと頭から手を下すと、すまないという雰囲気を表しながら周囲に頭を垂らす。
そして何事もなかったかのように振る舞うが、逆にそれが違和感を生み出してしまう。彼の慌てっぷりにタツキは、肩を竦め苦笑いを浮かべるしかない。一緒に働いていた頃から、本当に性格は変わっていない。それが妙に面白かったのだろう、過去の出来事を思い出す。
「次に会う時は、お風呂に入ってきてね」
「わかったよ」
タツキの厳しい言葉にクリスは渋々従うが、無意識に頭を掻こうと手を動かす。だがタツキの鋭い視線によって、寸前で手が止まった。それ以上の不潔な態度は、許されない。そう判断した瞬間、クリスあ急に大人しくなる。そして咳払いをすると、真面目な話を開始した。
「お前がいた時より状況は悪化。上からの要望は、無謀すぎる。お陰で、こちらは連日の徹夜だ」
「そうね、問題は彼等よ」
「それ以外、誰がいる」
「あの憎たらしい顔、思い出したくもないわ。イライラしてくるし……自分勝手なんだから」
「今も、トップに君臨しているらしい」
それは短いやり取りであったが、互いに言いたいことは理解していた。だからこそ、二人の表情が曇っていく。また、どうしてあのような人物が上に立つのか――タツキはその点が気に入らず、苛立ちが募る。その時、クリスが小声で呟く。その瞬間、タツキの身体が震えた。