エターナル・フロンティア~前編~

「それは?」

「タツキも知っているだろ?」

「もったいぶらないで」

「薬を投与され、後遺症が現れる確率だ」

「嘘でしょ? アタシがいた時は、60パーセント未満だった。それが、数年で……あり得ないわよ、その数字」

 能力者が使用する薬は、必ずといって良いほど後遺症を齎す。だが、それは連続しての投与によるもので、間を空けて使用すれば後遺症のリスクを軽減できるが、身体は確実に蝕む。

 それにより最終的には死を迎えるというのに、そのリスクが上がった。タツキは、言葉を失う。何故そこまでして、投与する薬の効果を高めるのか。数字の上昇は、能力者の死亡数と比例する。数少ない能力者を死なせる理由はない。寧ろ助け、保護するのが優先的だろう。

「俺だって、聞いたときは驚いた。このままだと、この宇宙から能力を持つ者が消えるのも時間の問題だ」

「でも、なんでここまでするの? それが、理解できないわ。でも、アタシも昔はそうだった」

「彼等を殺そうとしているようだな」

「何故?」

「さあな」

「無責任ね」

「そうさ、俺達科学者は無責任だ。目の前で生きている人間を、研究しているんだから。最低だよ」

 言葉が終わると同時に、ウエイトレスがアイスティーを運んできた。先にコースターをテーブルの上に置くと、続いてグラスとストローが置かれていく。その間、二人はその光景を静かに眺めている。互いに浮かべている真剣な表情に、ウエイトレスは足早に立ち去った。

 立ち入ってはいけない何か――

 そのように感じ取ったのか、立ち去る瞬間に見せたウエイトレスの表情は、何処か恐怖で引き攣っていた。気付かないうちに、科学者特有の殺気に似た雰囲気を放ってしまっていたのか。どちらにせよこれは好都合のいいことで、正直周囲に誰かがいたら邪魔であった。

 クリスはグラスを掴むと、喉を鳴らして一気にアイスティーを飲み干していく。その信じられない光景にタツキは、視線を横に向けつつ大きな溜息を付く。クリスの行った行為はあまりにも品性が無く、下品そのものといっていいもので、此方側の気分が悪くなってくる。
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