エターナル・フロンティア~前編~

「……野獣」

「うるせ」

「さっきのフケといい、それでは女性にもてないわよ。あの時から、変わっていないのだから……」

 ワイルドな飲み方に、タツキは愚痴をこぼす。一方クリスはそのようなことは関係ないとばかりに、氷を食べはじめた。ウエイトレスがアイスティーを持って来て一分未満、全てクリスの腹に納まってしまう。それだけでは飲み足りないのだろう、更にもう一杯注文する。

「最近、どうだ?」

「普通としか言えないわ」

 急な真面目な話に、タツキは言葉に詰まらせてしまう。そしてやっと発した言葉は、囁くようなものであった。タツキが仕事を辞めて、数年の年月が経過した。しかし、いまだにタツキを苦しめている。それは、逃げることのできない現実。そして時折、夢に見てしまう。

「アタシは、あの声が耐えられなくなり辞めてしまったわ……そして今も、耳に残っている」

「あの声は、人を狂わす」

「ええ、おかしくなるわ」

「俺も、そうなりかけた」

「それが、普通よ」

 研究が行われている部屋から響くのは「痛み・悲しみ・苦しみ」から発せられる、悲鳴に近い声音。実験体として生きる彼等の、魂の声というべきか。それらが毎日のように鳴り響き、苦痛を訴えていく。

 それは投薬の苦しみにもがく者。

 そして、身体を弄くられる者。

 それらの声音は、精神を蝕む。

「辞める前に、辞めさせられたな」

「それは、都合が良かったわ。手続きなど、しなくて良かったもの。普通に辞めるとなると、色々と面倒な場所だから。あれこれと言われて、特に私は……どうして、あそこまで行ってしまったのか」

「タツキの場合、俺より深い部分にいたからな……それに外部に洩れたら、ヤバいことが多い」

 連邦の研究所は裏に行くほど高い地位と名声を得ることができるが、同時に抜け出すことができなくなってしまう。裏の闇を知った場合、それを洩らすことは自身の運命を左右する。死にたくなければ、口を紡ぐこと。そして、それを口外するな。全ては、自身が生き残る為に――
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