エターナル・フロンティア~前編~
「貴方はどうなの?」
「俺か? 一歩手前で、止めている。一線を越えたら、戻れないからな。そんなことになったら、悲しむだろ?」
「アタシは、一線を越えてしまった。でも、さらに深い闇は知らない。勿論、知りたくもないわ」
「深い闇を知っているのは、奴だけだろう。あいつは、闇そのものだ。見ていて、恐ろしい部分がある」
クリスが言う“あいつ”というのは、ユアン・ラドックのことを示す。不可解な部分が多い謎の人物であるが、憧れを持つ者も多い。その反面、タツキやクリスのように嫌う人物もいる。
ユアンの本心は、何処に――
能力研究をしている科学者の間では、そのように言われている。しかし、それを知る者はいない。ユアンが身を置いている闇の世界同様、彼もまた闇と同じ。また、本心を隠す仮面を被っている。その偽りの表情に騙される者がおり、ユアンは何事もなく生活を送っている。
二人はそのことが許せなかったが、個人的に動くことはできない。それだけ相手は、手が出せない地位と場所にいる。それに、この時代の現状――能力者を庇うのは、異端に近い。
ユアンに対して周囲は、他にこのような考えが持たれている。「何を考えているかわからない」しかしそのように思われているだけであって、口に出すことはない。所詮、皆同じなのだ。
「そういえば、昔から折り合いが悪かったな」
「性格が嫌いなのよ。自分勝手で、周囲のことは何も考えていない。能力者のことだって、研究材料としか思っていない。最低の人間よ。それだというのに、周囲は何もわかっていない」
「研究一筋という人間ほど、質が悪い奴はいない」
「達が悪すぎよ」
「俺は?」
「普通かしら」
的確な回答を得られると思っていたクリスであったが、曖昧な回答に拗ね横を向いてしまう。タツキは何とも思っていない。だが逆に、それがクリスの良い部分だとタツキは思っていた。
良い人間は素晴らしいというイメージを持たれるが、裏の世界を知っているタツキに言わせれば彼等は偽善者。悪人同様、付き合いを拒む対象といっていい。人間は、中間の性格が一番。いや、悪人の方がまだいい。しかしそれ以外の者は、周囲の状況で変わっていく。