エターナル・フロンティア~前編~
「お客様、お加減でも悪いのですか?」
「えっ! あっ! 大丈夫です」
「唸り声を上げていたと、聞きますし……」
「本当に、大丈夫です。ただ、考えごとをしていただけですので。ですので、気になさらないで下さい」
「そうでしたか。もし何か困ったことがありましたら、気軽にご連絡下さい。病気でしたら、早急な対処が必要ですので」
それだけを言い残すと、乗務員は自分の仕事場に戻っていく。悩みごとと同時に唸り声を上げていたことに恥ずかしさを覚えたイリアは後方を一瞥すると、乗務員に連絡した乗客が此方に視線を送っている。イリアはその乗客にお辞儀をすると、相手も頭を下げてくれた。
大丈夫だと判断した乗客は、足早にその場を離れてしまう。その姿に何処か安心したような表情を浮かべると、イリアは小説を脇に抱えポケットから携帯電話を取り出す。そしてストラップとして使用している、はじめて幼馴染からプレゼントされた掌サイズの小さな熊の縫いぐるみに触る。
渡されてから何年も経過しているので全体的に色が薄くなってしまっていたが、イリアにとってとても幼馴染がくれた大切な物。何処へ行くにもこのように持ち歩き、プレゼントした相手にしてみれば「まだ持っていたのか」と呆れるだろうが、嬉しいのだから仕方がない。
それに、大切な物はいつまでも持っていたいと思うのが女心。それにこれは幼馴染からはじめてプレゼントされた物なのでそれだけ思い入れが深く、ボロボロになるまで持っているだろう。
イリアは幼馴染みに、友人以上の感情が芽生えつつあった。だがそのことに、イリアは気付いていない。だから知らず知らず幼馴染みを心配する行為が目立ち、それに気付いているのはごく一部。
「ソラ、私――」
幼馴染の名を呼んだとことで、答えてくれる相手はいない。急に寂しさが込み上げてきたイリアは縫いぐるみを抱き締めると、痛む胸に押し当てる。そして微かに肩を震わせ、泣きはじめた。
◇◆◇◆◇◆
シャトルは、レミエルの宇宙港に到着した。シャトルから降り立った瞬間、涼しい風が肌を撫でる。今まで空調の効いた暖かい場所にいたので、一段と肌が敏感になり服の下の肌に鳥肌がたつ。だが外気の違いに一番敏感だったのはアニスとディアーナで、くしゃみをし鼻を啜っている。