エターナル・フロンティア~前編~

「何事も犠牲はつきものだよ」

「それ、科学者らしい台詞だな」

「かっこいいだろ」

 それに続いて聞こえてきたのは、形相が歪むほどの笑い声。何をそんなに、面白いというのか。そのように思ってしまうほど、相手は馬鹿笑いをしている。それは他の世界で行われていることを客観的に楽しんでいる者達のようで、誹謗中傷は当たり前に行い、自己主張も繰り返す。

「あいつ等も役に立っているよ」

「そう、使い道が見出された。だから、感謝してもらいたいところだよ。俺達、普通の人間に――」

 次の瞬間、カディオが反射的に動く。徐に一人の胸倉を掴むと、壁に身体を叩き付ける。突然のことに相手は息が詰まり呼吸ができないらしく、相手の顔が徐々に赤く染まっていく。

「や、やめろ!」

「……煩い」

「何?」

「煩いと言っているんだ。お前らこそ、獣(けだもの)だ。どうせ多くの死体を見ても、笑っているに違いない」

 その言葉に普通なら間髪いれずに反論していいものだが、相手からの反論はなかった。それにより、カディオは瞬時に察する。言葉で示したことが、実際に行われたということを――

 実に胸糞が悪い。このような人間が近くにいたということだけで、腹立たしくなってしまう。いや、その考えは適切ではなかった。それを見抜けなかったカディオは、自身が許せないでいた。

 胸元を締め付けていた手から、力が抜けていく。それにより、捕まっていた者が開放される。ドスっと音をたて尻から床に落ちると同時に、仲間の一人が大丈夫かどうかと心配する。

「だからって、そこまですることはないだろ。もし何かがあった場合、お前は責任を取れるのか!」

「……違うのか」

「何?」

「俺達とあいつ等だ」

 それは、魂の叫びに近かった。しかし愚問とばかりに、相手は鼻で笑う。そもそもこの質問に対し、答えはひとつしかない。普通の人間こそが正しく、能力者は悪の象徴。故に、何をやってもいい。彼等が死のうが生きようが関係はなく、寧ろ生きて世の中の為になればこれほど喜ばしいことはない。
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