エターナル・フロンティア~前編~
人間、捨てていいモノと悪いモノが存在する。カディオはそれがどのようなモノなのかはわかっているので、それを捨て去ることは決してしない。もし捨ててしまった場合、人間としての生き方を捨ててしまったことになってしまう。しかし、彼等は平気でそれを捨て去る。
カディオは冷たい壁に背を預けると、遠い過去の出来事を思い出していく。それはソラと出会い、互いに過ごした日々。今思えば面白くて愉快で、実に多くの経験をすることになった。
特に、悪い日常というわけではない。刺激的というのは不謹慎な言い方であるが、そのような毎日を送れた。確かにカディオの日常は、ソラと出会ったことによって大きく変わった。
同時に、真の意味での友――いや、心を許して話し合える親友に出会えたことは、感謝しきれない。そもそもこの出会いに関して、感謝という言葉で簡単に表していいものではない。それだけソラとの出会いは衝撃的で、カディオの能力者に対しての考えを一変させるものとなった。
「俺は――」
カディオが、ソラを裏切るようなことは決してしない。それは宣言できるが、何をすればいいのかわからないでいた。何をしてどうのようにすれば、世の中を変えていくことができるというのか。
タツキは、流れを読む能力に長けているので下手に抗うことはしない。また、立ち向かう対象の大きさを知っているので、用心している。だから冷静に物事を見極め、機会を伺っている。一方、カディオは感情的に動いてしまい、その結果が先程の暴力に繋がってしまう。
流石にこれは褒められたものではないが、頭に血が上ってしまうと、勝手に身体が動いてしまう。それだけ、ソラのことを大事に思い心配している。だがそれでは、世の中を変えることはできない。いくら感情が強くても、カディオは世論を変えられるほどの力を有してはいない。
「クソ!」
溜まりに溜まった怒りをぶつけるように、拳で壁を叩く。
ゴン!
静寂が支配する廊下に響き渡るのは、重苦しい鈍い音。その音は誰にも聞かれることなく、空しく響き渡った。この音を誰かに聞かれていても、声を掛けてくる人物はいないだろう。
世の中の出来事は「大勢の意見にかき消される」という言葉で表すことができた。枠の中で生きる者と、そうでない者の差――それを肌で感じ取れる今日(こんにち)無情とも非情とも取れる社会の仕組みに、ただ涙が頬を伝う。そして刃向う者は異端と罵られ、同じように迫害される。