エターナル・フロンティア~前編~

 クリスは額に滲む汗を拭いつつ、タツキを凝視する。行動のひとつひとつを観察するつもりであったが、結論を出す前に溜息が漏れる。それだけタツキの行動は、理解不能に近かった。

「気分が悪い」

「あら、病気かしら? それなら、診断してあげるわ。ただ、料金は貰うわよ。きちんと稼がないといけないから」

「違う」

「無理はいけないわ」

 自身が行ったことを忘れてしまったのだろう、鼻歌を歌いながら洗濯物を干していた。流石に重要なことを忘れることはないが、タツキは自身の都合が悪い出来事は記憶から消すのが早い。

 そのことを知っているクリスは指摘するだけ無理とわかっているので、それ以上の追求はしない。ただ「茶の用意をしておく」と伝えると、地面に置いてあった箱を持ち建物の中へ向かう。

「もう、根性なし」

 吐き捨てるようにそう呟くと、パンっとシーツを叩く。そして、残った洗濯物を干していった。




 建物の中に広がるのは、コーヒーの香り。どうやら豆を挽いてコーヒーを落としているのだろう、インスタントコーヒーとは異なる独特の香ばしい香りが鼻を擽る。その香りにタツキは頬を緩ませながら、クリスがいると思われるキッチンへ向かうと、お茶の用意を手伝う。

「コーヒーでいいか?」

「ええ、構わないわ」

「持ってきたのは、マンゴープリンだ」

「あら、嬉しいわ」

「好きだろ?」

 長い付き合い同士、互いの好みはわかっていた。タツキの好物はマンゴープリンで、何か込み合った話をする時には必ず用意し、これを食べながら相談を行う。その理由として、タツキの精神を落ち着かせる効果があったからだ。いかんせんタツキは、頭に血が上りやすい。

 特に特定の人物に関してそれが起こりやすく、感情が爆発した場合相手がクリスであったとしても止めることはできない。それなら、ソラが止めに入る――という方法も考えられるが、果たして効果があるか。何せ、頭に血が上ったことにより周囲が見えなくなってしまうからだ。
< 230 / 580 >

この作品をシェア

pagetop