エターナル・フロンティア~前編~

 今回は、ソラについて話すつもりだった。タツキとってソラはお気に入りなので、油断すれば暴力を振るわれてしまう。それを危惧したクリスはマンゴープリンを用意し、身の安全を図った。しかしこれはあくまでも保険であって、タツキの行動は完全に運まかせといっていい。

 子供のような一面を有しているタツキであったが、科学者としては優秀であった。人間、一方が素晴らしいと片方が乱れるというが、それを見事に証明したのがタツキであり、クリスは悩みの種

 古くからの付き合いで、現代の実情を語れる数少ない人物。それらを総合するとタツキと別れるに別れられず、このように我慢して付き合っている。だが、苦手であって嫌いではない。

「で、用事とは?」

「旅行のこと」

「ああ、場所を決めていなかったな」

「そういうこと」

 落としたコーヒーをマグカップに注ぐと、テーブルの上に置いていく。ミルクと砂糖は好みなので、この時は入れない。長い付き合いとはいえ、ソラやカディオのように互いの好みは知らない。

「海は、行かないぞ」

「あれは、冗談よ」

「タツキの冗談は、冗談とは思えない。時折、本気で物事を遂行するからな。他人に迷惑を掛けるな」

 信じられないタツキの行動に愚痴をこぼすクリスであったが、タツキはその言葉を軽く受け流す。今はこのようなことを言い合うのではなく、目的の場所を決めなければいけない。

「これ、頂くわ」

「どうぞ。どうせ、土産だ」

 タツキはソファーに腰掛けると、クリスが持ってきたマンゴープリンを食べはじめる。マンゴー自体の甘みを生かした菓子に一口食べた瞬間、タツキの頬が緩み機嫌が良くなっていく。

 しかし、クリスは食べようとはしない。甘い物に関しては、好んで食べることはしないからだ。ブラックコーヒーを飲みタツキが食べ終えるのを待つが、そう簡単に終わることはない。

 タツキは好きな食べ物を、長い時間を掛けて食べ続ける性格の持ち主であった。それが彼女の特徴であり、クリスはそのことを理解していた。だからこそ、食べ終わるのを静かに待つ。足を組み寛ぐ姿は、完全に自身の自宅と同じ。これこそ、長く付き合っている証拠だ。
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