エターナル・フロンティア~前編~
「洗濯は、あれで終わり」
「なら、掃除は?」
「ゴミを捨てるだけね」
「それ、本当か?」
「疑り深いわね」
綺麗に掃除をしていると言わんばかりの態度に、クリスは嘆息してしまう。同時にソファーから立ち上がると、近くに置かれていた棚の四隅に指を這わす。その瞬間、一筋の道が生まれた。
「汚いな」
「この部屋は、最近掃除をしたわ」
「いや、最近というレベルじゃないな」
「別に、構わないわ」
「そ、そうか」
降り積もった埃から判断できるのは、一ヶ月近く掃除を行っていないということ。埃はアレルギーの原因となってしまい、他人を診察する前に身の回りの掃除を行わなければいけない。クリスはそのことを注意していくと、珍しいことにタツキは素直に従う素振りを見せた。
いつもなら間髪いれずに反論してくるのだが、今日に限って大人しい。どうやらこのことに対し自覚を持っているらしく、タツキの額には嫌な汗が滲み出し、決して視線を合わさない。
女性は女性らしく――と言うと逆鱗に触れそうだが、今のタツキにはこの言葉が適切といっていい。女性として生きているのなら、身の回りの整理整頓くらいは――いや、これは女性以前の問題だ。
このような汚い部屋での生活は、クリスは御免蒙る。掃除をする暇がなければ、誰かを雇って掃除をしてもらえばいい。その方が無駄に体力を消費せず、プロがやってくれるので綺麗に掃除が行われる。
だが、タツキ曰く「お金が勿体無い」らしい。しかし、ケチっていい部分と悪い部分がある。そのことをわかっていないタツキであるからこそ、このような汚い部屋で生活を送っている。
「ひとつ質問していいか」
「何かしら?」
「結婚……する気は?」
どのような意図を持って、そのような突拍子もない質問をしたのか。当初タツキは、突然の内容に身体が硬直してしまうが、これはクリスにとっても言えること。面白い内容が質問されたことにタツキは口許を緩めると、何を思ったのか大声で笑い出しクリスを驚かせた。