エターナル・フロンティア~前編~
「何、いきなり」
「クリスは、どうなのよ」
「いい相手がいたら。で、タツキは?」
「理想の相手がいたら、するわよ」
「そうか」
呟くように囁くと、溜息を付く。そして反射的に視線を逸らすと、肩を竦めて見せる。それは何処か余所余所しい態度で、いつもと違うクリスの態度にタツキは目を丸くしていた。
「どうしたの? いきなり」
「別に、いいだろ」
「ムキになって、可愛い」
「う、煩い」
クリスの口から「結婚」という単語が出てくるとは思わなかったらしく、タツキは冗談だと受け取ってしまう。しかし、クリスは真剣な気持ちで質問をしていた。それはタツキの将来を心配しているからのもので、このような不摂生な生活をしていればいつか倒れてしまう。
だから誰かいい人物と結婚し、生活面の管理を――と考えたが、本人は結婚する気などない。だが、タツキのような女性にしてみれば一生独身の方が楽で、下手に縛られたくないという。
「お前の将来が、心配だ」
「アタシの心配をする前に、自分の心配をしないと。結婚を口にするのだから、将来はするのでしょ?」
予想外の反撃に、クリスは絶句してしまう。確かにクリスは、将来結婚したいと考えていた。それは「いい人がいた」ということが前提で、今すぐに結婚したいということではない。
それに、いまだに「この人だ」という運命の人には出会ってはいない。無論、タツキは論外で、二人は元同僚の仲のいい友人同士。其処から恋愛感情に発展することは、無いに等しい。
「その表情は、したいと考えているようね」
「悪いか」
「悪くはないわ。普通に人生を送っていれば、いつかは結婚をするものよ。ただ、人によっては、わからないけど」
以前タツキは、自身の結婚観について語ったことがあった。それは、研究所で働いていた頃の話だ。あの時タツキは「結婚とは表面上の制約」と、言っていた。そもそも、結婚とは如何なることを示すのか。意外にその答えは難しく、適切な回答を述べられる者は少ない。