エターナル・フロンティア~前編~

 電話に出ることのできない忙しい用事があるのだろうと考えたイリアは、時間を置いてから再び掛けなおした方がいいと思う。しかし電話を切ろうとしたその時、相手の声音が耳に届く。明らかに不機嫌そうな相手の声音に、イリアは反射的に電話を切ろうとしてしまう。

「切っちゃ駄目」

 反射的に自分自身に突っ込みを入れると、恐る恐る幼馴染に迎えに来てほしいと頼む。だが、相手からの反応はなかった。更に、気まずい沈黙が続く。一体どれくらい経過したのかという頃、先に口を開いたのは幼馴染の方で、イリアの頼みを呆れているのか口調が悪い。

『親は?』

 それは絶対に聞かれる内容と予想していた内容なので、イリアは今までの出来事を簡略的に話していく。すると、やはり反応は悪かった。それに続くようにして、溜息が聞こえてくる。幼馴染の反応に対しイリアは心の底から申し訳ないと思うが、今は彼しか頼れない。

『旅行の帰りか』

「う、うん」

『荷物は沢山あるだろうね』

「……結構あるかも」

 その言葉が発せられた後、三度目の沈黙が続く。表情は確認できなかったが、不機嫌なオーラが電話口から漂ってくる。相手が迎えに行くのを躊躇っている気持ちもわからなくもないが、寒空の中を歩くのも辛い。だからといって相手にも都合があるので、強くは言えない。

『オレ、車は持ってないよ』

「嘘っ!」

『大量の荷物があるのなら、車じゃないと無理だろ。でもオレは、車は滅多に運転しないし』

「でも、運転できるって」

『運転は、できるよ。一応、免許はあるし』

 電話口から聞こえてくるのは、呆れたような声音だった。「一度も、車を持っていると話した覚えはない」そのように言われてしまうと、イリアは返す言葉が見付からない。やはり迎えは諦め徒歩の帰宅を考えないといけない状況に、イリアは徐に天を仰ぐと天候の崩れを心配する。

 頼むべき両親は不在。そして頼みの綱の幼馴染は、車を持っていないという。イリアは無理な頼みをしてしまったことを誤ると、電話を切ることにした。その時、何気なく発せられた幼馴染の言葉がイリアの行動を止めた。それは嬉しい内容であり、見兼ねて違う方法を取ってくれるというものだ。
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