エターナル・フロンティア~前編~
「いいの?」
『そうしないと、帰れないだろ』
「帰れないことはないけど……時間は、掛かると思う。だって、荷物が多いから。でも、大丈夫」
『風邪ひくぞ』
「平気よ」
防寒ということで厚着をしていても、長時間寒い外にいれば身体が冷え風邪をひいてしまう。それにイリアは身体が強い方ではなく、油断すればすぐに風邪をひいてしまう。だが風邪をひけば、アカデミーを休むことができる。そして、二人に会わなくて済むという気持ちも強い。
しかしそのような考えは実に愚かなものと気付いたイリアは、頭を振り馬鹿らしい考えを払い除ける。そして囁くような声音で、正直に迎えに来て欲しいと頼んだ。いくら彼女達を嫌っていようともそのようなことはできず、また風邪で寝込むのもこれはこれできついと知っている。
『わかった。車を借りに行くから、四十分くらいかな。遅くなるようだったら連絡する。じゃあ、切るから』
その告げると、一方的に電話が切られた。何処か冷たさが感じられる態度であったが、これが幼馴染の性格。あのような感じであっても根はとても優しく、時に親身になってくれる。ただ少々不器用な部分が目立つが、それはそれで可愛いのではないかとイリアは考えている。
イリアも同じように電話を切りポケットに仕舞いこむと、ソラが迎えに来るまでの時間をどのように過ごすか考える。といって特にやることはないので、イリアは周囲を見回し面白い物を探す。ふと、一軒の店が目に止まる。それは空港内に建てられた、ブランドショップだった。
暇潰しに最適と、イリアはショーウィンドーを覗いてみることにした。この時代ショッピングはネットを用いて購入するのが主流となっているが、中には実物を見て購入するという客もいるらしく、このようにショーウィンドーに並べる店が多く、どの店も服で溢れている。
だが、ショーウィンドーに映る自分自身の姿を見詰めていると、急に遣る瀬無い気分に陥る。今着ている服は、悲しいことに空港内を歩いている同年代より地味だった。色も暖色系ではなく寒色系で、日々研究に没頭しているせいかお洒落をすることを忘れてしまっている。
明るい色といったら研究の時に着ている白衣くらいだろうが、その白衣はシワだらけでそれを着て外に出ることはできない。それはイリアだけではなく、研究をしている同性も、似たような人達が多い。日々の研究は忙しく少しでもいいデータを出そうと、躍起になっているからだ。