エターナル・フロンティア~前編~

 結果的に、ディスクは無用の長物となってしまった。それなら素直にディスクを返却すればいいのだが、問題はそう単純ではない。他人のデータを盗んだとわかれば大問題に発展し、そのことを恐れた相手は証拠隠滅を図る為に大切なディスクを捨ててしまったという。

 だから、正しくは紛失ではなく捨て去り。研究を行なっている学生にとって研究データは命の次に大切な物であり、それを無責任な理由で捨て去るとはアカデミーで学ぶ資格はないとイリアは考える。いやその前に、そのようなことをしなければ単位を得られない時点で落第だ。

 それに、アニスとディアーナも同罪である。そもそも彼女達は、研究データの裏側に隠された真の意味合いを知っていない。これで科学者になりたいと大々的に言っているのだから、どうにかしている。また真に友人と名乗るのなら、このようなことは絶対に行なわない。

 このまま、卒業しなければいい。

 望む職業に、就くことができなければいい。

 これ以上、迷惑を掛けないでほしい。

 もう、頼らないでほしい。

 正直、そのように思ったことがあった。イリアはそのことを周囲に話したら、爆笑しながら賛同してくれた。クラスメイトの大半は、イリアのように研究を行っている生徒は多い。その為、この事件は許すことができず、ますますアニスとディアーナの評判を悪くする。

 卒業と同時に、縁を切りなよ。

 それが貴女の為になるわ。

 そのように言われたことを思い出す。どうせ二人は、卒業できる見込みはない。それならさっさと卒業し、他人の振りをしてしまえばいい。流石に就職先まで押しかけて――ということは考えにくい。もし押しかけてくるようであれば、それなりの対処を考えればいい。

 その時、ショーウィンドーに映った影に身体が震える。振り返り遠くを歩く人物に視線を移す。

 やはり、例の二人だった。

 見付かると厄介なので、イリアはその場から離れることにした。幸い二人はイリアに気付いておらず、喋ることに夢中で周囲のことに目がいっていないようだ。結果、通行客とぶつかってしまう。

 だが、謝る気配は全くなし。逆に相手が悪いと睨み付け、文句を言っている。しかし、言われる方は堪らない。勝手にぶつかっておきながら、自分は悪くないと他人の所為にする。本当に自分勝手な人間だとイリアは呆れるしかなく、相手側も肩を竦めるしかできなかった。
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