エターナル・フロンティア~前編~
対立した場合、此方側不利だ。それを知っているので、顰めた顔を普段の生真面目な表情へ変化させる。
「お待ちしていました」
「確か、その部屋は……」
「いえ、普通の部屋です」
「そ、そうか」
無駄な対立はしないが、圧力は掛けていく。彼にとって相手は邪魔な対象であり、失礼な人物。
それにより、精神的な圧迫に関しては容赦しない。相手もユアンが発している独特のオーラを強く感じ取ったのか、急に萎縮した態度を取る。そして、出入り口で立ち尽くしていた。
両者の年齢の差は大きい。
十歳以上――
いや、それ以上か。
ユアンは立場以上に、人生経験が豊富。
一瞬にして、優位な位置に立つ。
しかし、目上の人物を立てるということは怠らない。ユアンは態とらしく恭しい態度を取ると、相手の顔を見る。
「座って下さい」
「あ、ああ」
指し示した先に置かれていたのは、深紅のソファー。毎日綺麗に掃除をしているのか、塵ひとつ置いていない。それに、シミもない。ディスプレーとして置かれていると見間違うほどの美しさに、相手は腰掛けることを躊躇う。だが一言呟いた後に、ソファーに腰掛けた。
「飲み物は?」
「紅茶……いや、コーヒーで」
「わかりました」
最初は、紅茶を注文しようとしていた。ユアンの部屋に訪れた男は、日頃から紅茶を愛飲している。
その癖でユアンに注文したが、微妙な空気の変化を肌で感じ取ったのか、急に注文を変更する。空気の変化は、正しい。ユアン自身、無言の圧力を掛けたからだ。彼と男の付き合いは長い。
その為、日頃の愛飲も知っていた。
ティーパックの紅茶は、男の舌に合わない。高級の茶葉と、適温のお湯。また、好みの時間で茶葉を蒸らす。それらの行為を完璧に行わないと、男は紅茶を飲もうとはしない。更に、檸檬と砂糖も煩い。