エターナル・フロンティア~前編~
ソラは言葉を全身で受け止め、反論はひとつも行わない。行った瞬間、正体がわかってしまうからだ。
(どうか、このまま……)
それが、ソラの願いだった。
暫く帰りを待っていると、イリアが走って帰って来る。一体何処まで買い物に行ったのか、肩で息をしていた。
「これ、私のお奢りね」
「コーヒーか」
手渡されたコップは、温かかった。漂ってくる香りは、香ばしいコーヒーの香り。一口含んでみると、砂糖とミルクの甘味が舌を撫でる。予想外の味に、反射的にイリアの顔を凝視してしまう。一方のイリアは、どうしてそのような表情をするのかと、キョトンっとしていた。
勿論、ソラのコーヒーの好みは知っている。しかし彼女はソラの身体を考えて、この味を選んだ。
やはり、健康が全ての資本である。
「たまには、この味の方がいいでしょ? いつもブラックでは、胃に悪いと思って……駄目?」
「健康管理もするんだ」
「目覚ましといって、コーヒーを大量に摂取するから。ソラの身体が心配だもの。病気にならないかと……」
「朝は、きついから」
「でも、駄目よ」
「そうだね。イリアがそう言うなら、気をつけるよ。体調を悪くしたら、困るのはオレだから」
その言葉に、イリアの頬が微かに染まる。一瞬の変化にソラは気が付くが、敢えて気付かないフリをする。だが、イリアの方は困ってしまう。懸命に誤魔化し、隠そうとしていた。
「そ、それがいいわ」
「そうだね」
「なら、実行よ」
「イリアは、看護士か」
態と、意地悪の回答を述べる。
すると、ソラの言葉を本気に受け取ってしまったイリアは更に顔を赤く染め、しどろもどろになってしまう。俯き、ボソボソと聞き取れない言葉を言う。すると呟いた言葉が羞恥心を刺激したのか、顔はトマト状態と化す。そんなわかりやすい態度に、ソラはクスっと笑う。