エターナル・フロンティア~前編~
そしてこれ以上からかっては可哀想だと判断したのか、味わうようにコーヒーを飲む。普段、ブラックを好み飲んでいるが、たまには砂糖とミルクが入ったコーヒーいいと思う。特に、不味いということはない。寧ろ、胃袋に優しい。
「ね、ねえ」
「うん」
「用事って、何?」
「あ、ああ……卒業、おめでとう。メールで送ったけど、改めて口に出して言うよ。イリアは、苦労していたし」
「あ、有難う」
間近でそのように言われるとは思わなかったのか、礼を言っただけで言葉が詰まってしまう。
彼女にとって、長く喋っている異性はソラくらい。勿論、アカデミー時代も異性と喋っていたが、それはクラスメイトや友人と思い会話をしていた。しかし、ソラは違う。彼は幼馴染であり、特別の存在。日に日にその思いが強くなっていき、心が締め付けられていく。
本音を言えたら、どんなに言いか。
だが、言葉を封じる。
勇気が無い。
世間が許さない。
それが、イリアの立場を追い詰める。
勿論、ソラもイリアの心情を把握している。彼もまた、同等の心情を内に抱いていたからだ。
だからこそ、態度で感情を示す。
ソラは口を開くと、イリアが以前欲していた物を渡したいと言う。それは、洋服であった。
「覚えていたの?」
「勿論」
「……嬉しい」
「じゃあ、買いに行こう。まだ、店は開いているだろうし。卒業祝いだから、少し高くてもいいよ」
「有難う」
今日は、やけに優しい。本来であったら疑問に思う態度であったが、イリアは全く疑問に思わない。
それどころか素直に受け入れ、うっとりとした表情を浮かべる。まさか、このような展開が待っているとは予想していなかった。恥ずかしさと嬉しさが混じり合い、思考を溶かす。