エターナル・フロンティア~前編~
ベッドから起き上がると、軽く寝癖が付いている髪を掻く。愚痴が言葉として外に飛び出し、蟠りが更に強くなる。
夢の中で、過去の出来事が蘇る。
それは、悪い思い出。
視線を上げ、鏡に映る自身を見る。
正直言って、目付きは悪い。
完全に、悪人の目に等しかった。
次に、自身の横で眠っている人物に視線を向ける。年齢は、二十代後半。名前は、思い出せない。
言い寄ってくる異性が多くて覚え切れない。だからといって、全ての名前を覚えないわけでもない。
実力を示した者、自分の研究の手助けをしてくれる者。そのような人物は、名前を覚えている。
しかし、この者は違う。
勿論、特別な感情はない。
男は愛情がなくとも、女を抱ける。
まさに、ユアンがそれを示していた。
現に、誰一人として恋愛の対象として見ていない。
長い金髪。また、肌は大理石のように美しい。そして、整った顔立ち。ユアンが抱いた相手は、女優として活躍できそうな容姿を持っている。街を歩けば誰もが振り向くという感じの女性だが、ユアンの心が惹かれることはない。それどころか、尻軽女として罵っていく。
簡単に、身体を許すのだから。
女が身じろぐ。
瞬間、目を覚ました。
「起きたか」
当初寝ぼけていた女であったが、ユアンの声音を聞いた瞬間、目を見開く。慌てて周囲に視線を走らせ、自身が置かれている状況を把握していく。そして次の瞬間、全身を赤く染めた。
「寝すぎだ」
「……すみません」
「冗談だ」
ユアンはベッドに身体を横たわらせると、女の耳元で囁く。刹那、先程以上に紅潮する。流石、数多くの女を手玉に取ってきた人物。異性が喜ぶ行為と言葉は熟知しており、簡単に惹きこむ。予想通りの態度を示してくれたことに、クスクスと笑う。まさに、玩具状態だった。