エターナル・フロンティア~前編~

 ベッドから起き上がると、軽く寝癖が付いている髪を掻く。愚痴が言葉として外に飛び出し、蟠りが更に強くなる。

 夢の中で、過去の出来事が蘇る。

 それは、悪い思い出。

 視線を上げ、鏡に映る自身を見る。

 正直言って、目付きは悪い。

 完全に、悪人の目に等しかった。

 次に、自身の横で眠っている人物に視線を向ける。年齢は、二十代後半。名前は、思い出せない。

 言い寄ってくる異性が多くて覚え切れない。だからといって、全ての名前を覚えないわけでもない。

 実力を示した者、自分の研究の手助けをしてくれる者。そのような人物は、名前を覚えている。

 しかし、この者は違う。

 勿論、特別な感情はない。

 男は愛情がなくとも、女を抱ける。

 まさに、ユアンがそれを示していた。

 現に、誰一人として恋愛の対象として見ていない。

 長い金髪。また、肌は大理石のように美しい。そして、整った顔立ち。ユアンが抱いた相手は、女優として活躍できそうな容姿を持っている。街を歩けば誰もが振り向くという感じの女性だが、ユアンの心が惹かれることはない。それどころか、尻軽女として罵っていく。

 簡単に、身体を許すのだから。

 女が身じろぐ。

 瞬間、目を覚ました。

「起きたか」

 当初寝ぼけていた女であったが、ユアンの声音を聞いた瞬間、目を見開く。慌てて周囲に視線を走らせ、自身が置かれている状況を把握していく。そして次の瞬間、全身を赤く染めた。

「寝すぎだ」

「……すみません」

「冗談だ」

 ユアンはベッドに身体を横たわらせると、女の耳元で囁く。刹那、先程以上に紅潮する。流石、数多くの女を手玉に取ってきた人物。異性が喜ぶ行為と言葉は熟知しており、簡単に惹きこむ。予想通りの態度を示してくれたことに、クスクスと笑う。まさに、玩具状態だった。
< 382 / 580 >

この作品をシェア

pagetop