エターナル・フロンティア~前編~

 青空に響く、数を数える声。

 ユアンはそれを聞きつつ、隠れるのに最適な場所を探す。

 その時、大人達の会話が耳に届く。

 一人は、この孤児院の院長。もう一人は口調からして、相手が男だということが判断できた。

 一体、何を話しているのか――

 ユアンはかくれんぼをしていることも忘れ、部屋の中を覗き見る。幸い二人は会話に集中しているので、ユアンが覗き見ていることに気付いていない。その為、食い入るように聞き入った。

 院長と会話しているのは、三十代後半くらいの男。テーブルの上に大量の書類を並べ、真剣な表情を浮かべている。ユアンは男に視線を向けると、どのような人物なのか考えていく。

 相手は一見、セールスマンに思えた。

 だが、何処か雰囲気が違う。

 ユアンは孤児院に訪れるセールスマンを見ているので、彼等の特徴というものを把握していた。大半の者が明るい性格の持ち主で、必死に商品を売り込もうとする熱意が子供でもわかる。

 それに、愛想がいい。

 だが、この男は違う。

 どちらかというと、恐ろしかった。

「これからも宜しく」

「わかっている」

「しかし、何をしているのか。表の顔と裏の顔が、全く違う。まあ、此方にしてみればどうでもいいが」

「ふん。世の中、賢い者が得をする」

「そうですね。貴方を見ていると、そう思います」

 院長の言葉に、男はクスクスと笑う。

 何がそんなにおかしいのか。

 ユアンは、理解できなかった。

 今度は、世話になっている院長に視線を向ける。

 年齢は、六十代前半。温和な人物で、子供達の他孤児院の職員達からも慕われている人物だ。

 いつも笑顔を絶やさす、接してくれる院長。しかし、今の院長は全くの別人だった。口許は怪しく歪み、眼光が鋭い。時折何かを罵倒するような言葉を言い、声を上げゲラゲラと笑う。その姿はまるで、何かに取り付かれたような印象を与え、ユアンの身体を震わした。
< 385 / 580 >

この作品をシェア

pagetop