エターナル・フロンティア~前編~

「ねえ、本当に行くの?」

「勿論! 美味しい食べ物いっぱい食べたいし、玩具も欲しいから。院長先生。どんな人ですか」

「医者だ」

「医者!」

 院長の説明に、喜んでいた子供が黙る。医者に対し、いいイメージを持っていないからだ。

 苦い薬を飲まされる。

 痛い注射をうたれる。

 子供とって医者は、悪の帝王に近かった。その為、行きたいと叫んでいた子供は「やっぱりいい」と、断った。

「医者は、金持ちだぞ」

「嫌なものは、嫌です」

「それは困った」

 子供達の反応に、やれやれと肩を竦める。

 しかし、その反応がわからないわけでもない。院長も小さい頃、医者を苦手としていたからだ。

 だが、相手は有名な医者。孤児院の子供達の将来を考えると、医者の家に行くのが一番だ。

 今まで平和に暮らしていたが、何不自由のない生活というわけでもない。なんだかんだで、孤児院の経営状態はいい方ではない。寧ろ、赤字の月が多い。その為、子供達にもツケが回る。

 だが、誰一人として文句を言わない。

 それが逆に、不憫だった。

 だからこそ、本音としては言って欲しかった。

「無理は言わない。だが、考えて欲しい」

「院長先生が、言うのなら……」

「だよね」

「本当は、嫌だけど」

「ユアンは、どうする?」

「えっ! 僕?」

「そうだよ。ユアンは、何も言わないし」

 そのように言われても、すぐに自分の考えを言えるものではない。ユアンも、孤児院の生活を楽しんでいる。それに友人の別れもあるので「別れ」を極度に恐れていた。別の場所に行くものいいだろう。問題は、その場所で新しい友人ができるかどうか、其方の心配もあった。
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