エターナル・フロンティア~前編~

 立場的に、男の方が上。それを自負しているのか、堂々とした態度を取り続けている。その態度に対しリダードは、相手の名前を呼ぶ。「ラビル・アシュレー」それが、男の名前だ。

 相手は名前を呼ばれたが、特に反応を見せない。それどころかクスクスと笑い「嫌味ですか」と、言う。

「ああ、そうだった」

 相手が何故、そのように言ったのか。その意味を理解したリダードは、苦笑してしまっていた。「ラビル・アシュレー」というのは男の名前だが、本名ではない。彼にとって、自分を示す名称のようなも。

 しかし、フルネームで呼ばれることは少ない。何故なら、この名前には特別な意味があった。ラビル・アシュレーという名前の意味、それは男の故郷に古くから伝わる物語の中に登場する人物の名前。

 勿論、それを知っている人物は数少なく、リダードは大まかなストーリーしか知らなかった。この名前の登場人物は、物語の主役。しかし世間一般でいう、正義の味方のいい人ではない。

 どちらかといえば悪人で、非道と呼ばれる行為の数々を繰り返している。主人公は正義を第一に動かないといけないと思っている者にとっては、この話の内容は受け入れられない。

 だが男にとっては、逆にこれが人間らしいと思っている。だからこそ、この名前を名乗る。

「いつか、本名を聞けるのか?」

「それは無理ですね。何せ……忘れました」

 これは、冗談で言っているのではなく本気で言っていた。それに今の名前があるので、不便がないらしい。

 また名前に拘る人物は器が小さい人間と思っているので、これ以上追求して欲しくなかった。

「ところで……この建物は、傷みすぎです」

「金の問題だ」

「いえ、そういう意味で言っているのではないです。どうも、野鼠がうろついていて煩いです」

「それは、何処に――」

「まあ、見て下さい」

 ラビルと呼ばれた男はソファーから腰を上げると、徐に扉の方向へ歩いて行く。そして一気扉を開くと、廊下で立ち聞きをしていたユアンに視線を向け、裏が感じられる満面の笑みを浮かべた。一方リダードは、まさか孤児院の子供が立ち聞きをしていると思っていなかったらしく、驚き名前を呼ぶ。
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