エターナル・フロンティア~前編~
継子からの言葉がないことに、義父は毒付くと鷲掴みにしていた手を離す。その瞬間、身体が床に叩き付けられた。
「高い金を払ったというのに」
所詮ユアンは息子ではなく、実験道具に過ぎなかった。其処に、愛情の欠片も存在していない。それをまざまざと知ったユアンは、心の中の一部分が壊れかけていることに気付く。
義父は――
いや、あいつとユアンは呼ぶ。
義父を義父と呼ばない。
呼びたくない。
それに、信頼を置いていた孤児院の院長に対しても恨みを持つようになる。自分を金で売ったのだから。
散々悪態を付いた義父が、部屋から出て行く。そして一人取り残されたユアンは、重い身体を起こしテーブルの上に置いてあった資料に目を通す。自主的に勉強を行っていたので、文字は読める。
しかし専門用語を多用しているので、内容まで理解することはできなかった。だが、一部はわかった。
(こんなことで……)
投与された薬が血液に乗り、脳味噌を狂わせていく。純粋無垢と呼ばれていた少年が、歪んでいく。
人工的に科学者を生み出す。
しかしその副作用によって、悪魔を生み出した。
(なら……)
邪魔な者を排除すればいい。
しかし現在の能力では、それを可能とすることはできない。なら、どうすればいいのか――
次の瞬間、口許が緩む。
義父は、科学者。それを利用すれば、いくらでも知識を吸収することができる。現にユアンは、高い知識を求めた。勉強をするのは、億劫ではない。それに、知識は最大の武器と化す。
しかし、それを知られてはいけない。知られては、何をやられるかわかったものではない。
元々、頭がいいユアン。計画は、スムーズに決まっていく。だが、薬を大量に服用しているので、体力が持たない。再び床に倒れ込むと、何度も呼吸を繰り返す。眠気が襲ってくるのだったら、そのまま寝てしまってもいい。しかし薬の影響で、眠気が襲ってこなかった。