エターナル・フロンティア~前編~
それに、誰もユアンがどす黒い感情を抱いているとは気付いていない。いや、本来持っている方がおかしい。それだけ、ユアンの義父が行なっていたことは罪深い出来事であった。
会話は、思った以上に弾む。しかしそれを遮るように携帯電話が震え、設定していた時刻が来たことを教えてくれた。
相手は携帯電話をポケットから取り出すと、ユアンに「バイトの時間」と、言い苦笑いを浮かべた。そして振動を止めると、再びポケットに突っ込む。
これも、貧乏学生の苦労。通っている場所の学費に関しては親の仕送りがあるからいいが、生活費が問題らしい。その為週の半分以上バイトの時間を当て、生活費を稼いでいるという。
「じゃあ、僕……」
「いいんだ。楽しかった。君も、勉強を頑張って。それじゃあ、俺はバイトに行かないと……」
そう言いつつ、パソコンの周囲に置かれていた荷物を片付けていく。そして再度別れの挨拶を言うと、椅子から腰を上げ出入り口に向かって歩いて行った。
ユアンは暫く、相手の後姿を見詰める。その後何を思ったのか、先程まで貧乏学生が使用していたパソコンを弄くった。
履歴を探っているのではない。何となく、使用したかった――理由は、そのようなものだ。
相手は、将来目標としている人物。その人物が使用していたパソコンを使用すれば、それに近付けると思ったからだ。その為か今まで以上に勉強に身が入り、どんどん知識を吸収していった。
ふと、忘れ物を発見する。
それは、一枚の学生証明書。
どうやら、財布から落ちてしまったようだ。
証明書に書かれている、名前とアカデミー名。
アカデミーの名前に、ユアンは覚えがあった。それは、義父が過去に通っていた場所だったからだ。
(この場所なら……)
頭の中で、距離を考えていく。あの場所は、電車で通える距離。楽しい話をしてもらった礼ということで、学生証明書を渡しに行ってもいい。それに、これを紛失すると不便に違いない。
それなら、早く持って行った方がいい。それにアカデミーの事務員に手渡せば、目的の生徒の手に渡るだろう。
ユアンは二台のパソコンの電源を切ると、荷物を持ち図書館から出て行く。そして真っ直ぐ駅に向かうと、何個目の駅で降りればいいか調べていった。