エターナル・フロンティア~前編~
それは、牧歌的な歌。しかし義父に引き取られた後、一度も唄ってはいない。だが、記憶の中にハッキリと残っており、簡単に思い出し唄う。それだけ彼にとって、思い出深い歌のひとつだ。
ユアンはその場にしゃがみ込むと、気分良く唄う。一定の音量の中で、複雑な感情を籠めて。
その時、目の前に幻が生まれる。幻は人間の形を形成しており、幼少の頃のユアン達だった。仲良く、元気いっぱいに遊んでいる。時に服を汚し、孤児院の先生の雷が落下している。
ユアンの記憶の中に存在している光景が映し出されているのか、画面で画像を見ているように鮮明であった。同時に、胸が激しく痛く締め付けられてくる。
孤児院の真実を知っている中でも、あの時期に戻れることを願う。それだけ、友人達との生活は有意義であった。
無意識に、幻が映し出されている方向に手を伸ばす。その瞬間、懐かしい存在が陽炎のように揺らめき霧散した。
「腐っているのは、世の中」
ふと、歌が止まった。
同時に、本音を言う。
タツキやクリスを含め一部の人間は、ユアンを悪の象徴を名指ししているが決して根っからの悪人ではない。彼が言うように世の中が腐っているので、ユアンのような人物が誕生した。
それにユアンは、ソラ相手に手加減している。本気で実験と研究を行なえば、ソラは命を落としている。
彼は、ソラに自分の過去を重ねていた。その為、今一歩の部分で非情になることができない。
もし世界が腐っていなければ、ユアンはソラといい友人関係を築けていた。まさに、ソラとカディオの関係のように。しかし、時代が悪すぎた。結果、互いに敵同士となってしまう。
だが、深い意味での馴れ合いは好まない。ユアンは裏の世界に身を置き、生きるのを決意したのだから。
彼の周囲には多くの部下が存在しているが、その中に真の意味での友人や親友は存在しない。孤独の中で一人生きているユアンであるが、それに対して泣き喚くことは一切しない。
涙は、枯渇している。義父に人体実験された時に、一通りの感情を捨ててしまったのだ。それにより、現在の地位を獲得した。そのことに関して、後悔は持っていない。寧ろ、清々しい。また高い地位を得た結果、昔から計画していた義父への復讐を楽しめているのだから。