エターナル・フロンティア~前編~
「この部屋です」
指し示した方向にあるのは、一枚の扉。ユアンは扉を開くと、レナに中に入るように進めた。
部屋の中は、独特の雰囲気が漂っている。
微かに、薬品の臭いが鼻腔を擽る。また、一定のリズムを刻み機械が発する音が耳に届く。
室内を照らす明かりは、薄暗い。滅多に人が出入りしないのでこれくらいの明かりでいいと思っているのか、実に寂しい。しかしこの薄明かりが、部屋の現状を表しているといってもいい。
レナに続き、ユアンが室内に入っていく。すると同時に扉が閉まり、低い声音が部屋の中に響き渡った。
『何故、貴女が……』
珍しい人物の登場に、明らかに動揺していた。彼にとってレナは、自分の上司であった人。
偉大な人物で、勿論尊敬もしていた。その人物に何と言っていいのかわからないのか、後の言葉が続かない。
「元気……という言葉は、おかしいわね。今、貴方は全ての肉体を失ってしまったのだから」
囁くように呟くと、ゆっくりとした歩調で中心部へ歩いていく。彼女の視界の中に入ったのは、脳味噌が納められた機械。それを丁寧に指先で撫でると、脳味噌の主が人間の姿をしていた頃を思い出す。
「貴方は、優秀だった」
記憶はいい思い出と悪い思い出が、半々だった。その為悪い部分を思い出したのか、顔が歪む。
「どうして、あのようなことを……」
『高みを目指したかったのです』
「あの時でも、十分……」
『科学者の世界は、結果を出してこそ認められる。コーネリアス博士、貴女もそれを知っている』
「そうね」
『だから、それに従った』
人間は、貪欲に何かを求める生物。求めていくからこそ、広い宇宙にまで進出するほどの科学力を見に付けた。
貪欲的な一面を持たない人間であっても、心の片隅には貪欲な一面を持っている。ただ彼の場合、欲望が他の人間より突出していただけ。レナは彼の言葉を聞きつつ、自分の胸に手を当てる。そして淡々とした口調で、説教に似た言葉を言っていくのだった。