エターナル・フロンティア~前編~

 人間は、強い一面と弱い一面を持っている。以前のレナは前者が、今は完全に後者だ。しかし、レナは言う。昔から弱い一面を持っており、それを隠す為に偽っていたことを――

 第一線から離れ強がる必要がなくなったので、隠していた弱い一面が全面的に出てきたのだ。

 だからこそ、恐怖心を感じるという。

「私は、人間よ」

『どういう意味でしょうか』

「機械に成りきれなかったということよ」

 レナは能力研究の第一人者と呼ばれているが、実績に関してはユアンの方が上だ。それに、才能も敵わない。

 たまたま、研究の切っ掛けを生み出しただけのことに過ぎず、彼女自身「第一人者」と呼ばれるのが苦手だった。当時、機械の心を持っていたとしたら、別の意味で有名になっていただろう。

 それに比例し、数々の功績も残していたに違いない。そして今も現役で、第一線で働いていた可能性が高い。

 しかし、レナは後悔していない。

 今の生活が、一番だから。

 レナの本音に、アンドリューは何と言っていいかわからなくなってしまう。ただ無言を続け、レナの言葉を待つ。

「暗い話になってしまったわね」

『いえ。暗いのは、慣れています』

「……そうね」

 礼を言うことはしない。

 暗い状況は、当たり前となっているからだ。

 一通りの話を終えたのか、レナは部屋から出ると言う。それに対し、アンドリューは一言「お元気で」と、言った。

 アンドリューの言葉と、扉が開く音が混じる。しかしハッキリとレナの耳に届いたのだろう、微かに口許が緩んだ。

 扉が閉まると同時に、ユアンが言葉を掛けてくる。その瞬間、レナの顔から表情が消え去った。

「ええ、有難う」

 明らかに、ユアンとアンドリューの対応の仕方が違う。年齢を重ね、多くの人生経験を積んだレナでも、ユアンを相手にする場合油断できないのだ。下手すると、簡単に足下を掬われてしまう。勿論、ユアンは足下を掬うようなことはしないが、レナは警戒を解くことはしない。
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