エターナル・フロンティア~前編~
「優しいわね」
「あまり、言わないでほしいな」
「恥ずかしい?」
「……うん」
誰かに褒められ可愛いと言われた経験が少ないソラは、これに関しての耐性が低い。その為すぐに顔を赤らめ、動揺を隠し切れない。しかしレナに対しての心配りは忘れることなく、レナを立たせると彼女が靴を拭くのに使用していたティシュを受け取り捨てに行った。
「また、触りに行きましょう」
「……行くの?」
「勿論よ」
ティシュを捨て戻って来たソラに、ノリのいい口調でレナは提案してくる。それに対しソラは、あまりいい表情を作らなかった。その大きな理由は、動物の下に転がっている黒い物体だ。
ソラは何度も、黒い物体が転がっている方向に視線を向ける。その視線の走らせ方にレナは納得し表情を作ると、将来のことを踏まえた言葉を言う。それは、的を射た内容だった。
ソラは、犬を飼いたいと思っている。その生き物は機械ではないので、食べたり飲んだりすれば排泄物を出す。それを毎日掃除しないといけないので、汚いとは言っていられない。
レナの指摘に、ソラは渋い表情を作る。確かに今後飼いたいと思っている犬のことを考えると、これくらい我慢しないといけないし、いい経験になる。彼女の言葉に納得したのか、ソラは頷き「触る」と、言う。
「偉いわ」
「こういうことで、褒めないで欲しいな」
「苦手としていることをやろうとしているのだから、褒めたのよ。本当に、偉くて嬉しいわ」
「婆ちゃん、急に明るくなったね」
「貴方と一緒にいるからよ」
「オレも、婆ちゃんと一緒にいると楽しいよ」
「嬉しいことを言ってくるわね。さあ、触りに行きましょう。モコモコしていて、気持ちがいいのよ」
レナはソラの手を握ると、柵の中へと入って行く。そしてポンっと背中を押すと、早く触るように促す。彼女の言葉にソラは軽く頷いて返すと、利き腕でモコモコとした毛の表面に触れてみる。すると日光をたっぷりと浴びた毛は温かく、柔らかい感触が心地よかった。