エターナル・フロンティア~前編~
しかし気が変わったのか、手に取っていた薬瓶を棚に戻す。在り来たりの方法で甚振るのは、つまらない。それに、あの者に対して嫌悪感を抱いている。やはり、徹底的に行ないたい。
人間は自分を痛め付けられるより、自分に近い人物が痛め付けられる方が堪える。特に身内が痛め付けられると、身が引き裂かれる思いがするという。なら、身内を責めるのがいい。あの者には、娘が1人いる。彼女をどうにかすれば、父親は生きた心地がしないだろう。
噂では、娘を溺愛している。それにより、付き合う異性を選り好みしているというくらいだ。
そのような親を持つ娘は、異性に飢えている。それは、多くの女性と付き合ってきたユアンだからこそ知る情報だ。
ユアンはクスっと意味深い笑い方をすると、どのように落としどのように遊ぼうか考えていく。何度も女性と遊んでいるユアンだが、これを考えている時は研究や実験を行なっている時のような高揚感を得られる。
それにこのような遊びは、いいストレス発散になることが多い。ユアンは棚に置いた瓶を指で叩くと、踵を返し部屋から出て行く。そして鍵を掛け、部下達のもとへ急ぐのだった。
部下達が待つ部屋の前に到着した時、ユアンは動物の鳴き声を聞く。実験に小動物を使用しているが、この鳴き声は実験用の動物ではない。聞き間違いでなければ、鳴き声の主は犬である。
「誰か、犬を飼っているのか?」
「ラ、ラドック博士」
ユアンの登場に、部屋の隅に集まっていた者達が驚きの声を上げ互いの顔を見合っていた。その不審な動きにユアンは首を傾げると、部下達が集まっている場所に歩いて行くとその場所を覗き見た。
「子犬だな」
「は、はい」
「で、誰が飼っているんだ?」
「いえ、誰も」
「なら、何故いる」
このような場所の犬――それも子犬がいるのは、そもそもおかしい。誰かが飼育しているというのが正しい考え方だが、この中に飼育している者はいないという。だとしたら、他の部署の者が飼育していると考えた方が正しいだろう。ユアンはガシガシと頭を掻くと、溜息を付いた。