エターナル・フロンティア~前編~
そして再び子犬に視線を向けると、まじまじと観察していく。全体的に、毛並みは白。耳と四肢と尻尾の先が黒い毛並み。いや、黒い場所は其処だけではない。背中が丸く黒かった。そして、瞳も黒だ。
面白い毛並みに、ユアンは口許を緩めると子犬の頭に手を置く。すると、恐怖心を覚えたのか子犬が拒絶反応を見せた。
「嫌われた」
生き物は、危険人物を察知する能力が高い。子犬はユアンの身体から漂うオーラを感じ取ったのか、素早い動きで部屋の隅に逃げ、身体が小刻みに震えている。同時に、他の者達も拒絶した。
「あっ!」
その時、一人の科学者が手を叩き大声を出す。この者曰く、子犬の飼い主が誰か思い出したらしい。
「その者は誰だ」
「確か、生物研究の部署に所属する人物です」
「なら、その者のもとへ連れて行くか」
「で、ですが……」
誰もが、名乗り出ようとしない。何せこれほど拒絶反応を見せているのだから、抱き上げようとした瞬間、引っ掻かれる可能性が高い。しかし此処で連れて行けば、ユアンの信用を勝ち取ることができる。だが、引っ掻かれたくない。多くの者が、ジレンマに陥るのだった。
「誰かいないのか」
名乗り出ない部下達に、ユアンは一括する。その声音は部下達だけではなく子犬も驚かし、子犬が逃げ出してしまう。部屋から飛び出した子犬は廊下をフラフラとした足取りで走り、行ってしまう。
ユアンの部下達は慌てて子犬の後を追うが、すぐに見失う。彼等が働いている場所は、予想以上に広い。また、相手は小さい身体。何処かの隙間に逃げ込んでしまったら、捜し出せない。
「どうした」
「完全に、逃げられました」
「そうか。しかし、このような場所で生き物を飼育している者がいるとは……実験材料にする気か」
何気ない台詞であったが、部下達は過敏に反応を示す。確かにマウスを実験に使用しているが、子犬を実験に使用しているとは聞いたことがない。
この場所で働く者達の中には、変人――つまり一般的な感覚からずれている者もいるので、子犬を使用しようと考えていた者がいてもおかしくはない。だが、犬は愛玩動物。流石に、使用は気が引けてしまう。